判例(最判昭和36年3月7日)に基づく「重大明白説」について、以下のように解説できます
■ 問題の背景:「違法な行政行為は無効か?」
行政行為(たとえば建築許可や営業停止命令など)は、仮に法律に違反していたとしても、すぐに「無効(最初からなかったこと)」になるとは限りません。
多くの場合、「違法だとしても一応有効。あとから取り消せばいい」とされます。
ただし、あまりにもひどい違法なものは「最初から無効」と判断されることがあります。
■ 判例の立場:「重大明白説」
行政行為の無効が認められるのは、
その瑕疵(欠陥・ミス)が
(1)重大で、
(2)外から見て明白である場合に限る。
これが「重大明白説(じゅうだい・めいはくせつ)」です。
■ それぞれの意味:
- 重大性:
行政行為が守るべき重要な法令(例えば憲法や行政手続法など)に違反していること。
→ 例:全く権限のない役所が許可を出した、必要な手続をまったく踏んでいない、など。 - 明白性:
その違法(瑕疵)が、一般人から見ても外からハッキリ分かること。
→ 例:「この役所にこんな権限あるわけがない」と外から見てもすぐわかるようなケース。
■ なぜこの2つの要件が必要?
行政行為は、社会秩序や国民の権利に大きな影響を与えるため、簡単に「無効」とはできません。
一見して無効かどうかわからないと、国民が安心して行政行為に従えないからです。
だから「無効」と言うには、
- ひどく法律違反していて、
- 見た目にもそれがバレバレ、
という2つの厳しい条件が必要とされているわけです。
■ 例:
- × 無効とはいえない:
ちょっと手続にミスがある程度(住民に通知を忘れたなど)→ 取り消しはできるが無効ではない - ○ 無効:
市役所の職員が勝手に道路工事を禁止する命令書を出した → 重大な瑕疵+明白 → 無効