
具体例:未成年者の高額なゲーム購入
16歳のA君は、親に内緒でスマートフォンで高額なオンラインゲームのアイテムを購入しました。A君はまだ未成年であり、法律上、単独で有効な契約を結ぶ能力(制限行為能力)がありません。
この場合、ゲームの販売会社はA君との間でアイテムの売買契約を結んだことになりますが、A君には制限行為能力があるため、この契約は原則として取り消すことができます。
相手方の保護
しかし、このままではゲーム販売会社は一方的に不利益を被る可能性があります。そこで、民法では制限行為能力者の相手方を保護するための制度が設けられています。
催告権
ゲーム販売会社は、A君の親権者である親に対して、「A君がこの契約を追認(正式に認めること)するかどうかを1か月以上の期間を定めて催告する」ことができます(民法20条1項)。
もし、この期間内に親が「追認しない」という明確な意思表示をした場合、または期間が満了しても何も返答がなかった場合、この売買契約は最初から無効だったものとみなされます(民法20条2項)。これにより、ゲーム販売会社はこれ以上契約に拘束されることなく、A君にアイテム代金を請求することもできなくなります。
この例からわかること
- 制限行為能力者(この場合はA君)が結んだ契約は、原則として取り消すことができます。
- しかし、相手方(この場合はゲーム販売会社)は、催告権を行使することで、不安定な状態を早期に確定させることができます。
- 催告によって、相手方はいつまでも契約が有効なのか無効なのかという不安定な立場に置かれることを防ぐことができるのです。
このように、催告権は、制限行為能力者の保護と、取引の相手方の保護のバランスを取るための重要な制度と言えます。