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用益物権とは

用益物権の解説 | 行政書士の道

用益物権とは?具体例でわかりやすく解説

用益物権の定義:他人の物を自分のために利用・使用することができる権利

民法で定められている物権は大きく分けて「所有権」と「制限物権」の2つに分類されます。そして「制限物権」はさらに「用益物権」と「担保物権」に分かれます。今回は特に用益物権について、試験でよく出る要点と具体例を解説します。

1. 主な用益物権の種類

用益物権には以下の4種類があります:

種類 特徴 期間
地上権 他人の土地に建物等を所有するために土地を使用する権利 存続期間の定めなければ30年(最長50年まで設定可能)
永小作権 他人の土地で農作物を栽培する権利 20年以上50年以下
地役権 自分の土地(要役地)の便益のために、他人の土地(承役地)を利用する権利 存続期間の定めがなければ制限なし
入会権 特定の地域住民が共同で山林や原野を利用する権利 慣習による

試験対策ポイント:各用益物権の存続期間は頻出です!特に地上権と永小作権の期間の違いに注意しましょう。

2. 具体例で理解する用益物権

地上権の例

【具体例】マンションの区分所有と地上権

Aさんは駅前の土地を所有しています。デベロッパーB社はその土地にマンションを建設したいと考えています。そこでB社はAさんから土地を借りる代わりに「地上権」を設定します。

これにより:

  • Aさんは土地の所有権を保持したまま、地代収入を得られる
  • B社は土地を購入せずにマンションを建設・所有できる
  • マンション購入者はB社から「区分所有権」と共に「地上権の準共有持分」を購入する

この仕組みを「借地権付きマンション」と呼びます。

永小作権の例

【具体例】大規模農業経営と永小作権

農家のCさんは自分の農地だけでは規模拡大できないため、隣町に住むDさんの遊休農地に永小作権を設定してもらいました。

これにより:

  • Cさんは30年間、Dさんの土地で農業を行い収穫物を得る権利を持つ
  • Cさんは年に一度、小作料をDさんに支払う
  • Dさんは土地の所有権を維持したまま、安定した小作料収入を得られる

※実務上は現在ほとんど使われず、代わりに賃貸借契約が多い

地役権の例

【具体例】通行のための地役権

Eさんの土地は公道に面していませんが、隣接するFさんの土地を通らないと公道に出られません。そこでEさんはFさんの土地に「通行地役権」を設定してもらいました。

これにより:

  • Eさんの土地(要役地)の利便性のために、Fさんの土地(承役地)の一部を通行できる
  • 地役権は、要役地の所有権と一体となり、要役地が譲渡されれば地役権も一緒に移転する
通行地役権の図

入会権の例

【具体例】山林の共同利用

G村の住民は古くから村の周囲の山林で薪を集めたり、山菜を採取したりする慣習があります。この山林に対する村民の共同利用権が「入会権」です。

これにより:

  • G村の住民は共同で山林を利用できる
  • 入会権は村の住民であることを条件に認められる(個人に帰属するのではなく、集団に帰属する権利)
  • 村から転出すると入会権を失う

3. 用益物権と債権(賃借権)の違い

用益物権と似た効果を持つものに「賃借権」がありますが、以下のような違いがあります:

用益物権 賃借権(債権)
効力 物に対する直接的支配権(対世効) 特定の人に対する請求権(対人効)
第三者への対抗 登記によって当然に対抗可能 借地借家法等の特別法による保護がない限り、登記が必要
優先順位 物権としての順位で決まる 債権は原則として平等
設定方法 登記が対抗要件(第三者に主張するため) 契約のみで成立

記憶のコツ:「物権は物を直接支配する権利、債権は人に請求する権利」と覚えましょう。用益物権は物権なので、物(土地や建物)に対する直接的な支配権を持ちます。

4. 試験でよく出る論点

地上権と賃借権の違い

地上権は物権、賃借権は債権という違いがあります。地上権は登記すれば第三者に対抗できますが、賃借権は原則として登記が必要です(ただし借地借家法により保護される場合あり)。

地役権の成立要件

地役権が成立するためには次の条件が必要です:

  1. 要役地と承役地が異なる所有者に属すること
  2. 近隣または隣接していること(必ずしも物理的に接している必要はない)
  3. 要役地の便益のために承役地を利用すること

永小作権の現代的意義

永小作権は現代ではほとんど利用されていませんが、試験では農地法との関係や存続期間について問われることがあります。

5. 過去問で見る用益物権

【平成30年度 問1】

地上権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

  1. 地上権は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するためにその土地を使用する権利である。
  2. 地上権の存続期間は、20年を下ることができない。
  3. 地上権者は、その権利の目的に違反しない限度において、その土地の用法を変更することができる。
  4. 地上権は、第三者がその土地について取得した権利を妨げない。

正解:2

解説:地上権の存続期間に関する制限はなく、当事者が自由に定めることができます。存続期間の定めがない場合は30年とされています(民法268条)。これに対し、「20年を下ることができない」という制限があるのは永小作権です(民法278条)。

覚え方のコツ:永小作権は「永」が付くだけあって、最低期間(20年)が定められていると覚えましょう。地上権には最低期間の定めはありません。

まとめ

  • 用益物権とは、他人の物を自分のために利用・使用する権利
  • 主な用益物権は「地上権」「永小作権」「地役権」「入会権」の4種類
  • 用益物権は物権であり、登記により第三者に対抗できる
  • 賃借権(債権)と比較すると、物に対する直接支配権である点が異なる
  • 各用益物権の存続期間の違いは試験でよく問われる

行政書士試験対策のポイント:用益物権は民法の中でも頻出分野です。特に地上権、地役権の要件・効果について重点的に学習しましょう。また、物権と債権の違いを理解することも重要です。

※内容について質問や補足があれば、コメント欄にお寄せください。

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