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取締役会制度と代表取締役を攻略!専決事項・書面決議・包括的代表権まで解説 P226

行政書士試験で重要な取締役会制度について、設置義務から専決事項、代表取締役の権限まで頻出ポイントを具体例で分かりやすく解説します。

目次

  1. 取締役会制度
  2. 代表取締役

1. 取締役会制度

①取締役会の設置義務

ポイント:取締役会の設置が義務付けられているのは、公開会社・監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社だけです。

具体例

設置義務あり:A株式会社(東証一部上場)は公開会社なので、必ず取締役会を設置する必要があります。
設置義務なし:B株式会社(非公開会社、取締役3名のみ)は取締役会の設置は任意です。設置しない場合、株主総会がより広い権限を持ちます。小規模会社では取締役会を設置せず、機動的な意思決定を行うことが多いです。

②取締役会の専決事項

ポイント:重要な財産の処分や譲受け・多額の借財・支店などの重要な組織の設置、変更、廃止は、取締役会の専決事項とされ、必ず取締役会で決定しなければなりません。

具体例

C株式会社の代表取締役D氏が、5億円の工場用地を購入したい場合、いくら代表取締役でも独断では決定できません。取締役会を開催し、「この土地購入は会社にとって必要か」「価格は適正か」などを他の取締役と議論し、過半数の賛成を得て初めて実行できます。

③業務執行の委任

ポイント:取締役会の専決事項でない業務執行の決定は、代表取締役に委任できます。

具体例

E株式会社が「100万円以下の設備購入は代表取締役に委任する」と取締役会で決議した場合、代表取締役F氏は80万円のコピー機購入を独自に判断できます。しかし、200万円の機械購入は委任範囲を超えるため、再び取締役会の承認が必要です。

④特別取締役制度

ポイント:取締役が6人以上、かつ社外取締役が1人以上いれば、取締役会で3人以上の特別取締役を選任し、多額の借財などについて議決させることができます。

具体例

G株式会社(取締役8名、うち社外取締役2名)が特別取締役3名を選任した場合、緊急の資金調達が必要な際、取締役全員を招集せず特別取締役3名のみで借入れの可否を決定できます。大企業での迅速な意思決定を可能にする制度です。

⑤取締役会決議の要件

ポイント:取締役会の決議は、取締役の過半数が出席し、その過半数をもって決します。なお、特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができません。

具体例

H株式会社(取締役5名)で取締役I氏の報酬を決める場合、I氏以外の4名のうち3名以上が出席し、その過半数(2名以上)の賛成で決議されます。I氏は特別の利害関係があるため議決権はありません。自分の利害に関わる事項で投票権を与えると公正性が保てないためです。

⑥書面決議制度

ポイント:定款により、取締役全員が書面または電磁的記録で議案に同意し、監査役が異議を述べなかった場合、議案を可決する取締役会決議があったとみなすことができます。

具体例

J株式会社の取締役が全国に散らばっており、緊急の契約承認が必要な場合、定款に書面決議の定めがあれば、各取締役にメールで議案を送付し、全員が「賛成」と返信し、監査役が異議を述べなければ、実際に会議を開催しなくても正式な取締役会決議として成立します。

2. 代表取締役

⑦代表取締役の選定義務

ポイント:取締役会が設置された場合、取締役会は、取締役の中から、業務を執行し、会社を代表する代表取締役を選定しなければなりません。

具体例

K株式会社(取締役会設置)の取締役L氏、M氏、N氏の中から、取締役会で「L氏を代表取締役に選定する」と決議。L氏が代表取締役として業務執行と対外的な会社代表を担います。取締役会設置会社では、代表取締役を置かないことはできません。

⑧包括的代表権

ポイント:代表取締役の代表権は、会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為に及ぶ包括的なものであり、代表権を制限しても、善意の第三者に対抗することはできません。

具体例

O株式会社が代表取締役P氏の代表権を「5000万円以下の契約に限る」と内部で制限していても、P氏が1億円の契約を締結した場合、契約相手のQ社がこの制限を知らなければ、契約は有効です。Q社は「代表取締役なら何でもできるはず」と信頼して取引したためです。取引の安全性を重視した制度です。

⑨訴訟における代表権の制限

ポイント:取締役会設置会社と取締役との訴訟については代表取締役に代表権はありません。監査役が会社を代表します。

具体例

R株式会社が取締役S氏を「任務懈怠で損害賠償請求したい」として訴訟を起こす場合、代表取締役T氏がS氏を訴えることはできません。同じ取締役同士で利益相反が生じるためです。代わりに監査役U氏が会社を代表してS氏を訴えます。監査役の独立性を活かした制度です。

まとめ

取締役会制度は会社の重要事項を集団で決定する合議制機関として機能します。専決事項の設定により重要性に応じた意思決定プロセスが確保され、特別取締役制度や書面決議制度により効率性も両立されています。代表取締役は強力な代表権を持ちますが、利益相反の場面では制限されます。行政書士試験では、取締役会の設置要件、専決事項の範囲、代表権の制限が及ぶ場面と及ばない場面を正確に区別することが重要です。これらの制度は企業の健全な意思決定と取引の安全性を両立させる重要な仕組みです。

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