行方不明者が長期間生死不明の場合、「法律上死亡とみなす制度」があります。これが「失踪宣告」です。
一見すると単純そうですが、「普通失踪」「特別失踪」という区別があり、民法上の細かいルールを知らないと簡単に間違えてしまいます。
行政書士試験でもよく出題されるポイントなので、この記事でバッチリ整理しましょう!
✅ そもそも失踪宣告とは?
失踪宣告とは、家庭裁判所が「この人は死亡したものとみなします」と法的に判断する制度です。
これにより、相続や保険金請求、婚姻関係の整理などがスムーズに進められます。
🔍 普通失踪と特別失踪の違いは?
種類 | 状況 | 必要期間 | みなし死亡時点 | 条文 |
---|---|---|---|---|
普通失踪 | 単に行方不明になっただけ | 7年間 | 7年経過時点 | 民法30条1項、31条 |
特別失踪 | 戦争、海難、災害など命の危険がある状況に遭遇 | 危難が去ってから1年間 | 危難が去ったとき | 民法30条2項、31条 |
💡ポイントは「みなされる死亡時点」
- 普通失踪 → 行方不明から7年経過時点で死亡とみなす。
- 特別失踪 → 危難(戦争や沈没など)が「去った時点」で死亡とみなす。7年じゃない!
⭐️失踪宣告後に本人が戻ってきたら?
民法32条により、「生存が証明されれば、失踪宣告は取り消される」ことになっています。
ただし!次の点に注意:
- 失踪宣告とその取消しの間に、**善意でした法律行為(相続・再婚など)**は有効です。
- 婚姻関係は、新しい配偶者が善意だったかどうかで扱いが変わります。
✅ 不在者・失踪宣告に関する肢別問題 解説表
番号 | 正誤 | 内容の要約 | 根拠条文・判例 | 解説ポイント |
---|---|---|---|---|
2 | ◯ | 不在者が自分で管理人を選任 → 生死不明なら利害関係人・検察官が改任請求できる | 民法26条2項 | 管理人は本人が選任しても、生死が不明な場合は家庭裁判所の関与で改任可能。 |
3 | ◯ | 7年間生死不明なら、家庭裁判所が失踪宣告できる。死亡したと「みなされる」のは7年満了時 | 民法30条1項、31条 | 普通失踪では「失踪から7年経過=死亡とみなす」。遡及効ではなく、「みなし死亡」時点が明確。 |
4 | ✕ | 船の沈没事故(特別失踪)は「1年」→「事故時に死亡とみなす」 | 民法30条2項、31条 | 危難時失踪(特別失踪)は、危難が去ってから1年で失踪宣告。事故から7年ではない。 |
5 | ✕ | 失踪宣告は「死亡みなし」だが、権利能力は消滅しない。取消し前の善意の行為は有効 | 民法31条、32条1項 | 権利能力喪失ではなく、「死亡したとみなす」にすぎない。善意第三者保護のため取消し前行為は原則有効。 |
6 | ✕ | 生存が判明しても、自動で婚姻が無効にはならない。善意・悪意で婚姻関係の判断が変わる | 民法732条、744条、770条1項5号、32条 | Aの生存を知らなかった(善意)場合は、後婚が有効。悪意なら重婚状態になり、取消や離婚事由に。 |
💡補足解説(全体)
- 普通失踪と特別失踪の違いを正しく押さえることがカギ。
- **「みなし死亡」≠「権利能力喪失」**なので、法的効果の違いに注意。
- 婚姻関係は当事者の「善意・悪意」で法的評価が変わるので、状況判断が重要。