目次
1. 商人間の売買について
①買主の検査義務
ポイント:商人間では、買主は受領した目的物を遅滞なく検査する義務があります。
具体例
A商店がB商店から100個のりんごを購入した場合、Aは商品を受け取ったらすぐに傷んだりんごがないか、数量は正しいかなどを確認しなければなりません。「忙しいから後で確認する」は通用しません。
②不適合発見時の通知義務
ポイント:種類・品質・数量の不適合を発見した場合、売主が善意であれば直ちに通知しないと、履行の追完請求等ができなくなります。
具体例
上記のりんごの例で、50個しか入っていないことを発見したA商店は、B商店に即座に「数量が足りません」と連絡する必要があります。1週間後に連絡しても、もはや残り50個の追加請求はできません。
③隠れた不適合の通知期限
ポイント:直ちに発見できない不適合でも、売主が善意なら6か月以内に発見し通知しなければ権利を失います。
具体例
C電器店がD商事から冷蔵庫を購入。外見上は問題なかったが、3か月後に冷却機能に欠陥があることが判明。この場合でも、C電器店は発見後直ちにD商事に通知すれば、修理や代金減額を求めることができます。
④契約解除時の保管義務
ポイント:不適合により契約解除された場合、売主と買主の営業所が異なる市町村にあるときは、買主が売主の費用で目的物を保管する義務があります。
具体例
東京のE商店が大阪のF商店から不良品を購入し契約解除した場合、E商店は商品をF商店に送り返すのではなく、保管場所を確保してF商店の費用負担で保管しなければなりません。
⑤注文と異なる物品の保管義務
ポイント:引き渡された物品が注文と異なる場合も、上記と同様に買主が保管する必要があります。
具体例
G書店が「漫画100冊」を注文したのに「小説100冊」が届いた場合、G書店は「間違った商品だから受け取れない」と突き返すのではなく、一時的に保管する義務があります。
⑥売主の競売権
ポイント:買主が目的物の受領を拒む場合、売主は催告後に競売できます。価格低落のおそれがあれば催告不要です。
具体例
H商店がI商店に生鮮食品を販売したが、I商店が受け取りを拒否。生鮮食品は腐りやすいため、H商店は催告なしで競売にかけ、売却代金を代金に充当できます。
2. 匿名組合について
⑦匿名組合員の出資制限
ポイント:匿名組合員は金銭等の財産でのみ出資でき、労務出資はできません。
具体例
レストラン経営をするJ氏の匿名組合に参加したいK氏は、現金1000万円や土地での出資は可能ですが、「料理の腕前を提供する」という労務出資はできません。
⑧出資の所有権
ポイント:匿名組合員が出資した財産は営業者の所有となります。
具体例
上記の例で、K氏が出資した1000万円はJ氏の財産となります。K氏は「やっぱり返して」と言っても、営業が継続している限り返還請求はできません。
⑨業務執行権
ポイント:業務を行うのは営業者のみで、匿名組合員は業務執行や代表行為はできません。
具体例
K氏は出資者でも、レストランの仕入れ先と契約を結んだり、従業員を雇ったりすることはできません。あくまでJ氏が全ての経営判断を行います。
⑩利益分配
ポイント:事業で得た利益は、契約で定めた割合に従って匿名組合員に分配されます。
具体例
レストランが年間500万円の利益を上げ、契約で「利益の30%をK氏に分配」と定めていれば、K氏は150万円を受け取る権利があります。
⑪出資の返還
ポイント:匿名組合終了時に出資は返還されますが、損失が生じた場合は匿名組合員が負担し、営業者は残額のみ返還すればよいです。
具体例
K氏が1000万円出資したレストラン事業が失敗し、300万円の損失が発生。この場合、K氏に返還されるのは700万円のみで、300万円の損失はK氏が負担します。
まとめ
商人間の売買では、一般消費者とは異なる厳格なルールが適用され、迅速な対応が求められます。匿名組合では、出資者の権利が限定的である一方、営業者に大きな裁量が与えられる仕組みとなっています。行政書士試験では、これらの特徴的なルールを正確に理解することが重要です。