「行政書士試験」まで
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代物弁済と相殺,債権譲渡,債務引受,差押え

■ 1. 代物弁済(だいぶつべんさい)と相殺(そうさい)

①【代物弁済】債務が消えるタイミングは「代わりの物を渡したとき」

解説:
お金の代わりに「別のもの」を渡して借金を返すのが代物弁済です。
その「代わりのもの」を実際に渡したときに、借金は消えます。

具体例:
AさんがBさんに100万円の借金 → Aさんが代わりに「車」を渡して返済
→ この借金は、「車を引き渡したとき」に消えます。
※不動産なら、登記(登記簿に書き込むこと)したときに消えます。

②【相殺】相手の返済日が来てなくても、相殺できる

解説:
相殺とは「お互いにお金を貸し借りしてるなら、帳消しにしよう」ということ。
相手の支払いがまだ先でも、その人が「先に払っていいよ」と言えば、相殺できます。

具体例:
AさんがBさんに10万円を貸している(返済日は来月)
でもBさんは、Aさんから今日10万円借りた
→ Bさんが「もう今返していいよ」と言えば、今、相殺できます

③【相殺】時効で消えた債権でも、条件を満たせば使える

解説:
お互いに貸し借りしていて、相殺できる状態になった後に、自分の貸金債権が時効で消えても、それを使って相殺は可能です。

具体例:
Aさん→Bさんに10万円貸してる(時効まだ)
Bさん→Aさんに10万円貸してる(同時期)
→ 相殺できる状態になったあと、Aさんの債権が時効で消えても、相殺できます。

④【相殺】禁止される相殺がある

解説:
相手の命や身体を傷つけて、損害賠償を請求されているとき、自分の債権と相殺してはいけません

具体例:
AさんがBさんにケガをさせ、Bさんが損害賠償請求中
Aさんが「でもBさんに10万円貸してたから相殺で」と主張してもダメ

⑤【相殺】債権が差し押さえられた後に取得した債権では相殺できない

解説:
差し押さえとは、「裁判所がこのお金を使うな!」と命令すること。
相手の債権が差し押さえられたあとで手に入れた債権で相殺するのは禁止。
でも、差押えの前に持ってた債権なら相殺OK。

ただし:差押え後に手に入れた債権でも、もともと差押前の原因(たとえば古い契約)から生まれた債権ならOK(他人から買ってきた債権はNG)。

具体例:

  • 差押え前から持ってた債権 → OK
  • 差押え後に突然手に入れた債権 → NG
  • 差押え後に手に入れたけど、契約は差押え前からあった → OK

■ 2. 債権譲渡(さいけんじょうと)と債務引受(さいむひきうけ)

⑥【債権譲渡】「譲渡しちゃダメ」という約束があっても、有効

解説:
契約書に「この債権は他人に譲渡しない」と書いてあっても、譲渡はできます(ただし、制限される効果はある)

具体例:
AさんがBさんからお金を借りて「この契約は譲渡禁止」と書いてある
→ でもBさんがCさんに貸金債権を譲渡しても、その譲渡は有効

⑦【譲渡制限特約を知っていたら】履行を拒める

解説:
譲渡制限があると知っていたり、うっかりしすぎてた人(重過失)は、債権を受け取れても、債務者は「それ、知らなかったし払わん」と拒否できます。

具体例:
A→B(債務者)に「この債権は他人に譲渡しないよ」と約束
→ BはC(譲受人)に「知らない人だから払わん」と言える(Cが知ってたor重過失なら)

⑧【対抗要件】通知や承諾で第三者にも効力がある

解説:
債権譲渡をしたら、債務者に通知または債務者の承諾が必要。
これを確定日付のある書面で行えば、第三者にも対抗できる(主張できる)

具体例:
BさんがAさんに「Cさんに譲ったよ」と書面で通知(確定日付あり)
→ 他の債権者Dにも「Cさんが持ってる債権」と主張できる

⑨【免責的債務引受】債務者の代わりに払う人が現れるパターン

解説:
「もう債務者には請求しませんよ」となるのが免責的債務引受。
債権者と引受人の契約でOKで、債務者に通知したときに効力が出ます。

具体例:
Aさん→Bさんに借金
Cさんが「私が払います」とAさんの代わりになる
→ Aに通知したら、Aはもう払わなくてOK(免責)

⑩【併存的債務引受】引受人が加わって「連帯保証」みたいな状態

解説:
併存的とは、もともとの債務者も残り、引受人も追加で債務者になること。
契約の当事者は2通りOK:

  • 債権者+引受人 → 契約成立
  • 債務者+引受人 → 債権者が承諾したら成立

具体例:
A→Bに借金
Cが「Bが払えないとき、私も払います」
→ BとCが契約して、AがそれをOKしたら、併存的債務引受になります。

まとめ表(ざっくり)

項目内容ポイント
代物弁済他の物で返済実際に渡したときに債務消滅
相殺①弁済期前でもOK期限の利益を放棄すればOK
相殺②時効後でもOK相殺適状後に時効→相殺可
相殺③生命・身体への損害賠償とは相殺NG人命保護のため
相殺④差押後に取得した債権ではNG差押前ならOK、原因次第で例外あり
債権譲渡①譲渡制限あっても有効効力は制限される
債権譲渡②特約を知ってると履行拒絶可重過失もNG
債権譲渡③確定日付書類で第三者に対抗可通知・承諾要
債務引受①免責的→旧債務者は外れる債権者+引受人契約、債務者通知で発効
債務引受②併存的→旧債務者も残る債権者または債務者との契約、承諾で効力

🔹⑤のテーマ:「差押え」と「相殺のタイミング」

■ 基本の用語確認

用語意味
自働債権自分が相手に貸してるお金(こちらが請求できる)
受働債権自分が相手から借りてるお金(こちらが支払う義務)
差押え債権者が裁判所に頼んで、相手の債権をロックすること(他人が勝手に使えないように)

■ 結論:ポイントは「いつその債権を持ってたか」

【原則】

  • 相手(受働債権)が差押えられたあとに取得した自働債権では相殺できない
     → なぜなら、「もうその債権(お金)を自分の都合でいじっちゃダメ」となっているからです。

【例外】

  • 差押えの前からの原因(契約や請負など)に基づいてあとで取得した債権なら、相殺できることもある
     ただし、「他人から債権を買った」とかならNGです。

■ わかりやすい具体例で解説!

🎯シンプルな例(原則)

  • Aさん → Bさんに50万円の支払義務(受働債権)
  • CさんがBさんの債権を差し押さえ(=「Aよ、Bに払うお金は動かすな!」)
  • その後、AさんがBさんに50万円貸す(自働債権を得る)

→この場合、相殺はNG!
Cさんが差押えして守ろうとしているのに、Aが勝手に帳消しにしようとしたらズルいですよね。

🎯例外パターン(契約は差押え前)

  • AさんとBさんは、差押えの前から「来月お金貸すよ」って契約してた
  • 実際に貸したのは差押えの後
  • つまり、債権の「原因」は差押え前

→この場合は、相殺OKになる可能性がある

🎯NGな例(他人から買ってきた)

  • Aさんは、Bさんの債権を他人(D)から買ってきた(=取得したのは差押後)
  • 差押えの前にその原因もなかった

→この場合は、相殺NGです。
ズルい「後出しジャンケン」になるからです。

🔑まとめると

タイミング・状況相殺できる?理由
差押え前に自働債権を持っていた自由に相殺できる
差押え後に自働債権を得た債権を勝手に動かせない
差押え後に得たが、原因は差押前〇(例外)差押え前の契約に基づいてるから
差押え後に他人から買った債権債権の原因も差押え後でズルい

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