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連帯保証と保証債務の違いを具体例で完全解説

【行政書士試験対策】連帯保証と保証債務の違いを具体例で完全解説!催告の抗弁権・検索の抗弁権の有無がポイント

行政書士試験で重要な連帯保証と保証債務について、催告の抗弁権・検索の抗弁権の有無から責任範囲まで頻出ポイントを具体例で分かりやすく解説します。

目次

  1. 保証債務の基本
  2. 通常の保証(単純保証)
  3. 連帯保証
  4. 両者の違いまとめ

1. 保証債務の基本

①保証債務の性質

ポイント:保証債務は、主債務者が債務を履行しない場合に、保証人が代わりに履行する義務です。主債務に従属する「付従性」「随伴性」「補充性」という性質を持ちます。

具体例

A銀行がB商事に1000万円を貸し付ける際、C社長が保証人になる場合を考えます。
付従性:B商事の借入債務が無効なら、C社長の保証債務も無効になります。
随伴性:A銀行が債権をD銀行に譲渡すれば、C社長の保証債務もD銀行に移転します。
補充性:まずB商事に請求し、履行されない場合にC社長に請求するのが原則です。

②保証契約の成立要件

ポイント:保証契約は債権者と保証人との間の契約であり、主債務者の同意は不要です。ただし、書面または電磁的記録によることが必要です。

具体例

E商店がF銀行から300万円借りる際、G氏(E商店の知人)が「私が保証します」と口約束しただけでは保証契約は成立しません。必ず書面で「保証債務額300万円、利息・損害金も含む」など具体的に記載し、G氏が署名・押印する必要があります。

③保証債務の範囲

ポイント:保証債務は、主債務に関する利息・違約金・損害賠償・その他の債務に従たるすべてのものを包含します。

具体例

H株式会社がI銀行から元本500万円を借り、J氏が保証人になった場合、J氏は元本500万円だけでなく、約定利息(年3%)、遅延損害金(年14.6%)、I銀行が請求にかかった費用なども保証することになります。

2. 通常の保証(単純保証)

①催告の抗弁権

ポイント:債権者が保証人に債務の履行を請求したとき、保証人は「まず主債務者に請求してください」と主張できます。これが催告の抗弁権です。

具体例

K商事が返済期日を過ぎても200万円を返済しないため、L銀行が保証人のM氏に「代わりに払ってください」と請求した場合、M氏は「私に請求する前に、まずK商事に催促してください」と断ることができます。ただし、K商事が破産した場合や行方不明の場合など、催告しても無意味な場合は催告の抗弁権を主張できません。

②検索の抗弁権

ポイント:債権者が主債務者に催告した後でも、保証人は「主債務者に弁済する資力があり、執行も容易であることを証明して、まず主債務者の財産を執行してください」と主張できます。

具体例

N銀行がO商店に催告後、保証人のP氏に請求した際、P氏が「O商店は預金が500万円あり、不動産も所有している。債務は300万円なので十分に資力があります。まず差押えをしてください」と証明した場合、N銀行は先にO商店の財産を差し押さえる必要があります。P氏は検索の抗弁権を行使できます。

③分別の利益

ポイント:保証人が複数いる場合、各保証人は債務額を頭数で割った金額についてのみ責任を負います。

具体例

Q株式会社の600万円の債務について、R氏、S氏、T氏の3人が保証人になった場合、各保証人は200万円ずつの責任を負います。債権者のU銀行がR氏に「600万円全額払え」と請求しても、R氏は「私の責任は200万円です」と主張できます。ただし、他の保証人が破産等で支払い不能になった場合でも、自分の負担額以上の責任は負いません。

3. 連帯保証

①連帯保証の性質

ポイント:連帯保証人は、主債務者と連帯して債務を負担します。通常の保証人が持つ催告の抗弁権・検索の抗弁権・分別の利益のすべてが認められません。

具体例

V銀行がW商事に800万円貸し付け、X氏が連帯保証人になった場合、V銀行はW商事に一度も催告することなく、いきなりX氏に「800万円払ってください」と請求できます。X氏は「まずW商事に請求して」「W商事の財産を差し押さえて」と断ることはできません。

②抗弁権の排除

ポイント:連帯保証人は催告の抗弁権も検索の抗弁権も主張できないため、債権者は主債務者と連帯保証人のどちらに対しても、どちらを先に請求しても構いません。

具体例

Y商店が返済期日を守らない場合、Z銀行は以下のいずれの対応も可能です:
① Y商店にのみ請求
② 連帯保証人のAA氏にのみ請求
③ 両方に同時に請求
④ AA氏に先に請求し、足りない分をY商店に請求
AA氏は「先にY商店に請求して」と断れません。

③全額責任

ポイント:連帯保証人が複数いても、各連帯保証人は債務の全額について責任を負います。分別の利益はありません。

具体例

BB商事の1200万円の債務について、CC氏、DD氏、EE氏の3人が連帯保証人になった場合、債権者のFF銀行は各連帯保証人に対して1200万円全額の請求が可能です。CC氏が「3人いるから私は400万円の責任」と主張することはできません。ただし、CC氏が1200万円全額を支払った場合、DD氏とEE氏に対して各400万円ずつ求償できます。

4. 両者の違いまとめ

①比較表

項目 通常の保証 連帯保証
催告の抗弁権 あり なし
検索の抗弁権 あり なし
分別の利益 あり なし
責任の程度 補充的責任 主債務者と同等
債権者の請求先 原則として主債務者が先 主債務者・保証人どちらでも可

②実務上の違い

ポイント:実務では連帯保証が圧倒的に多く利用されます。債権者にとって回収しやすく、通常の保証では実効性が低いためです。

実務例での比較

銀行融資の場面:
通常の保証なら:「まず会社に催告して、会社の財産を調査して、差押えをしてから私に請求してください」と保証人が主張可能
連帯保証なら:銀行は会社が元気でも、返済期日が来れば即座に連帯保証人に全額請求可能

賃貸借契約の場面:
通常の保証なら:「まず借主に催告して、借主の給料を差し押さえてから請求して」と保証人が主張可能
連帯保証なら:家賃滞納があれば、借主に催告することなく即座に連帯保証人に請求可能

まとめ

保証債務と連帯保証の最大の違いは、保証人が持つ3つの権利(催告の抗弁権・検索の抗弁権・分別の利益)の有無です。通常の保証では保証人がこれらの権利により一定の保護を受けられますが、連帯保証ではこれらの権利がすべて排除され、主債務者と同等の厳しい責任を負います。行政書士試験では、具体的な事例において「どちらの保証形態か」「どの権利を主張できるか」「債権者はどのような請求が可能か」を正確に判断することが重要です。実務では債権者保護の観点から連帯保証が多用されているため、その仕組みと効果を理解することが重要です。

✅ 試験対策ポイント

保証債務は弱い責任:まず主債務者優先

連帯保証は強力責任:保証人でも即請求OK

連帯債務は平等責任:誰かが払えば全体として解決、でも内部で負担あり

内部リンク︰連帯債務と求償

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