不動産物権変動と動産物権変動の解説
1. 物権変動の基本概念
物権変動の定義:物権変動とは、物権(所有権、地上権、抵当権など)が発生・変更・消滅することをいいます。簡単に言えば、物に対する権利の得喪変更のことです。
物権変動の定義:物権変動とは、物権(所有権、地上権、抵当権など)が発生・変更・消滅することをいいます。簡単に言えば、物に対する権利の得喪変更のことです。
物権変動は、売買、贈与、相続などの原因によって発生します。民法では、物権変動の効力発生要件について、不動産と動産で異なる規定を設けています。これが不動産物権変動と動産物権変動の区別の基本となります。
ポイント:物権変動は、物権の得喪変更という実体的変動そのものと、その変動を第三者に対抗するための要件という2つの側面から理解することが重要です。
不動産物権変動の定義:不動産(土地および土地の定着物)に関する物権の発生・変更・消滅のことをいいます。
不動産物権変動の典型例としては、以下のようなものがあります:
不動産物権変動については、民法第177条に規定があります:
「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」(民法第177条)
意思表示の合致
(売買契約など)
物権変動の発生
(当事者間で有効)
登記
(第三者対抗要件)
不動産物権変動の特徴:
不動産登記には以下のような効力があります:
AがBに土地を売却した後、同じ土地をCにも売却した場合:
動産物権変動の定義:動産(不動産以外の有体物)に関する物権の発生・変更・消滅のことをいいます。
動産物権変動の典型例としては、以下のようなものがあります:
動産物権変動については、民法第178条に規定があります:
「動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。」(民法第178条)
意思表示の合致
(売買契約など)
物権変動の発生
(当事者間で有効)
引渡し
(第三者対抗要件)
動産物権変動の特徴:
動産の引渡しには、以下のような方法があります:
重要な相違点:
物権変動の原則(意思主義・対抗要件主義)には、いくつかの例外があります。
動産に特有の制度として「即時取得」があります。民法第192条に規定されています:
「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。」(民法第192条)
即時取得の要件:
AがDから盗んだ時計をBに売却し、Bがその時計を善意・無過失で購入した場合:
背信的悪意者排除論:単に「悪意」(他人の権利を知っていること)だけでなく、「背信的」(他人の権利を知りながらそれを侵害する意図で行動すること)である第三者は、たとえ登記を備えていても権利を主張できないという法理論です。民法の一般原則である信義則(1条2項)の適用例です。
物権変動に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例に照らし、正しいものはどれか。
正解:2
解説:
選択肢1は誤りです。譲渡担保における目的物が動産である場合、第三者に対抗するためには引渡しが必要です。
選択肢2は正しいです。判例上、背信的悪意者は登記がなくても対抗することができないとされています(背信的悪意者排除論)。
選択肢3は誤りです。動産の即時取得における占有の始めは、現実の引渡しだけでなく、簡易の引渡し、占有改定、指図による占有移転でも構いません。
選択肢4は誤りです。詐欺による意思表示は、第三者に対抗できる無効ではなく、取消しは相対的効力しかなく、第三者には対抗できません。
物権変動に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例に照らし、誤っているものはどれか。
正解:1
解説:
選択肢1は誤りです。判例上、差押債権者は「第三者」に該当するため、登記がないBは差押債権者Cに対して所有権取得を対抗できません。
選択肢2は正しいです。簡易の引渡しも民法上の引渡しの一種であり、対抗要件として有効です。
選択肢3は正しいです。動産の二重譲渡の場合、先に引渡しを受けた者が権利を主張できます。
選択肢4は正しいです。原則として無権利者からは権利を取得できませんが、即時取得の要件を満たす場合は例外的に取得できます。
行政書士試験対策ポイント:物権変動は民法の中でも特に重要かつ頻出の分野です。意思主義と対抗要件主義の基本原則を理解した上で、不動産と動産の違い、特に対抗要件(登記と引渡し)の違いを明確に把握することが重要です。また、背信的悪意者排除論や即時取得などの例外的な制度についても押さえておきましょう。
※この記事は行政書士試験の学習用に作成されています。より詳しい解説や関連する過去問の分析については、「行政書士の道」の関連コンテンツをご覧ください。