目次
1. 根保証の基本概念
①根保証とは
ポイント:将来にわたって継続的に発生する借金や取引について、上限金額を決めて保証する約束のことです。
身近な例で考えてみよう
お父さんの保証人:けいこさんのお父さんが、友人の田中さんの事業資金について銀行で保証人になりました。「田中さんが銀行からお金を借りたり返したりを繰り返すけど、最大で1000万円まで保証します」という約束をしました。これが根保証です。田中さんが300万円借りて200万円返して、また500万円借りても、けいこさんのお父さんの責任は最大1000万円までです。まるで「保証の枠」を決めているようなものです。
②普通保証との違い
ポイント:普通保証は「1回限りの特定の借金」を保証しますが、根保証は「継続的な取引全体」を一定の上限内で保証します。
2つの保証の違い
普通保証の例:ゆうたくんが友達のしんじくんの「今回だけ10万円借りる」という約束の保証人になりました。しんじくんがお金を返せば、ゆうたくんの保証人としての責任は終わりです。
根保証の例:あきらさんが弟のたろうくんの「アパート経営で銀行と継続的にお金の貸し借りをする」という約束の保証人になりました。「最大500万円まで」という枠で保証するので、たろうくんが何度お金を借りたり返したりしても、あきらさんの責任は最大500万円です。
③制度の目的
ポイント:継続的な取引で毎回保証契約を結び直す手間を省き、同時に保証人の責任が無制限に膨らまないよう保護する制度です。
なぜ根保証が必要?
継続取引での便利さ:みきさんが経営する雑貨店が、問屋さんから商品を仕入れる時、毎月お金を借りたり返したりします。みきさんのお母さんが保証人になる時、毎回新しい保証契約を結ぶのは大変です。そこで「最大300万円まで」という根保証にすれば、一度の契約で継続的な取引をカバーできます。お母さんも「300万円以上は絶対に責任を負わない」と安心できます。
2. 極度額
④極度額の意味
ポイント:極度額とは、保証人が責任を負う金額の上限のことです。どんなにたくさん借金が増えても、この金額を超えて責任を負うことはありません。
極度額は保証人を守る大切な「天井」
極度額800万円の場合:さとしくんのお父さんが、さとしくんの会社の銀行借入について「極度額800万円」で根保証人になりました。さとしくんの会社が1000万円の借金をしても、お父さんが払わなければならないのは最大800万円です。まるで「保証の天井」があるようなもので、それ以上は責任を負いません。
⑤極度額の設定ルール
ポイント:極度額は契約書にはっきりと金額を書かなければなりません。あいまいな表現では無効になります。
極度額の正しい決め方
正しい例:「極度額は金500万円とする」「保証する金額の上限は300万円」など、具体的な数字をはっきり書きます。
間違った例:「常識的な範囲で保証する」「適当な金額まで」「借りた分だけ全部」など、あいまいな表現は使えません。このような契約は法律上無効になってしまいます。
⑥極度額なしは無効
ポイント:極度額を決めていない根保証契約は、法律上無効になります。保証人を無制限の責任から守るためです。
極度額がないと契約自体が無効
無効になる例:ひろしさんが息子の会社の借金について「いくらでも保証します」という約束をしました。でも、この約束は法律上無効です。なぜなら、極度額(上限)が決まっていないからです。ひろしさんがどれだけ責任を負うのか分からないと、とても危険だからです。このような契約は最初から「なかった」ことになります。
3. 元本確定事由
⑦元本確定とは
ポイント:元本確定とは、それ以降新しい借金については保証責任を負わず、確定時点の借金だけを保証する状態になることです。
元本確定で何が変わる?
確定前の状態:まりこさんが娘の店の仕入れ資金について「極度額200万円」で根保証人になっています。娘がお金を借りたり返したりしても、まりこさんの責任は常に最大200万円です。
確定後の状態:元本確定が起きると、その時点での借金(例えば120万円)だけがまりこさんの責任になります。娘がその後新しくお金を借りても、まりこさんには関係ありません。120万円だけを心配すればよくなります。
⑧確定事由の種類
ポイント:元本確定は、法律で決められた特定の出来事が起きた時に自動的に発生します。
どんな時に元本確定する?
保証人が亡くなった時:たけしさんが息子の事業の根保証人でしたが、たけしさんが亡くなりました。この時点で元本確定し、たけしさんの相続人(奥さんや子ども)は、たけしさんが亡くなった時の借金だけを引き継ぎます。
主債務者が破産した時:保証してもらっている人(お金を借りている人)が破産すると、その時点で元本確定します。
保証人が破産した時:保証人自身が破産した場合も元本確定します。
⑨確定後の効果
ポイント:元本確定後は、普通保証と同じような状態になり、確定時点の借金についてのみ責任を負います。
確定後はもう増えない
確定後の安心感:よしこさんが夫の会社の根保証人(極度額1000万円)でしたが、夫が亡くなって元本確定しました。確定時の借金が600万円だった場合、よしこさんの責任は600万円だけです。会社がその後どんなに借金を増やしても、よしこさんには関係ありません。「根保証の終了」ともいえる状態です。
4. 貸金等根保証契約
⑩貸金等根保証の特別ルール
ポイント:お金の貸し借りについての根保証では、保証人(特に個人)を守るための特別に厳しいルールがあります。
お金の貸し借りは特に注意
特別ルールが必要な理由:ひとみさんが弟の消費者金融からの借金の根保証人になる場合、普通の商売の保証よりもリスクが高くなります。なぜなら、お金の貸し借りは借金がどんどん増えやすいからです。そこで、ひとみさんを守るために、期間を制限したり、より厳しい条件を設けています。
⑪期間の制限
ポイント:貸金等根保証契約では、保証期間に上限があります。個人が保証人の場合は最長5年です。
5年で自動的に終了
期間制限の例:こうじさんが友人のカードローンの根保証人になりました。契約から5年経つと、自動的に元本確定が起きて、根保証は終了します。こうじさんの責任は、5年目の時点での借金だけになります。友人がその後さらにお金を借りても、こうじさんには関係ありません。5年ごとに「リセット」されるような仕組みです。
⑫個人保証人の保護
ポイント:個人が貸金等根保証の保証人になる場合、より厳格な保護ルールが適用されます。
個人は特に手厚く保護される
厳格な条件:なおこさんが息子のビジネスローンの根保証人になる時、銀行はなおこさんに対して、極度額の意味、期間の制限、元本確定の仕組みなどを詳しく説明しなければなりません。また、なおこさんが「本当に理解している」ことを確認する必要があります。会社が保証人になる場合よりも、個人の保証人の方がずっと厳しく保護されています。
まとめ
根保証は、継続的な取引での保証を便利にしつつ、保証人を守る大切な仕組みです。必ず極度額(上限金額)を決めることで、保証人の責任が無制限に増えることを防ぎます。元本確定が起きると、それ以降の新しい借金については責任を負わなくなります。特にお金の貸し借りの根保証では、個人保証人を守るために期間の制限(最長5年)や厳格な説明義務などの特別ルールがあります。行政書士試験では、極度額の設定方法、元本確定事由の種類、貸金等根保証の特別ルールがよく出題されます。普通保証と根保証の違い、極度額がない契約は無効になること、個人保証人により手厚い保護があることを、具体例と一緒にしっかり覚えましょう。現代の取引では根保証が広く使われているので、保証人になる時の注意点としても重要な知識です。