譲渡担保権の実行とは?具体例でわかりやすく解説
譲渡担保権の実行とは:債務者が債務を弁済しなかった場合に、譲渡担保権者が目的物を換価(現金化)し、その代金から債権を回収する手続きのことです。処分清算型と帰属清算型の2つの方法があります。
譲渡担保権の実行とは:債務者が債務を弁済しなかった場合に、譲渡担保権者が目的物を換価(現金化)し、その代金から債権を回収する手続きのことです。処分清算型と帰属清算型の2つの方法があります。
譲渡担保権の実行とは、債務者が約束の期限までに借金を返さなかった場合に、担保として預かっている物を売却して、その売却代金から債権を回収する手続きです。
譲渡担保権の実行には、以下の2つの方法があります:
Step 1: AさんはBさんから300万円を借り、担保として自分の車(時価400万円)をBさんに譲渡担保として提供しました。
Step 2: 返済期限が到来しましたが、Aさんは借金を返済できませんでした。
Step 3: BさんはCさんに車を350万円で売却しました(処分清算型の実行)。
Step 4: Bさんは売却代金350万円から債権300万円を回収し、残額50万円(清算金)をAさんに返還します。
売却代金
350万円
債権回収
300万円
清算金返還
50万円
Step 1: DさんはEさんから200万円を借り、担保として自分の絵画をEさんに譲渡担保として提供しました。
Step 2: 返済期限が到来しましたが、Dさんは借金を返済できませんでした。
Step 3: Eさんは絵画を適正に評価し、その価値を280万円と算定しました。
Step 4: Eさんは評価額280万円から債権200万円を差し引いた80万円(清算金)をDさんに支払い、絵画の所有権を取得します。
適正評価額
280万円
債権回収
200万円
清算金支払
80万円
実行方法選択のポイント:
受戻権の定義:譲渡担保権者が譲渡担保権の実行を完了するまでの間、債務者が債務を弁済して目的物の所有権を回復させることができる権利のことです。
不動産の譲渡担保において、清算金が支払われる前に目的不動産が債権者から第三者に譲渡された場合、原則として、債務者もしくは残債務を弁済して目的物を受け戻すことはできない(人が背信的悪意者に当たる場合であっても異ならない)
判例の意義:この判例により、処分清算型における受戻権の消滅時期が明確になりました。
集合動産譲渡担保とは:動産の集合体を対象として譲渡担保を設定した場合のことです。構成部分の変動する集合動産であっても、その種類・所在場所・量的範囲を指定するなどの方法により目的物の範囲が特定できます。
小売店を経営するFさんが金融機関から融資を受ける際に、店舗内の在庫商品全体を一括して譲渡担保の対象とします。在庫商品は日々売買によって入れ替わりますが、「○○店舗内の全商品」として範囲を特定することで集合動産譲渡担保が成立します。
集合動産の特徴:
設定:GさんはHさんから500万円を借り、自分の所有する自動車(時価600万円)を譲渡担保として提供しました。
問題発生:Gさんが返済期限までに借金を返済できませんでした。
実行開始:HさんはIさんに自動車を550万円で売却しました。
清算:Hさんは売却代金550万円から債権500万円を回収し、残額50万円をGさんに清算金として支払います。
受戻権の消滅:HさんがIさんに自動車を譲渡した時点で、Gさんの受戻権は消滅します。
問題発生:Gさんが返済期限までに借金を返済できませんでした。
評価:Hさんは自動車の価値を適正に評価し、580万円と査定しました。
清算金支払:Hさんは評価額580万円から債権500万円を差し引いた80万円をGさんに清算金として支払います。
所有権移転:清算金の支払いと同時に、自動車の所有権がHさんに移転します。
譲渡担保権の実行に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。
正解:4
解説:
選択肢1は誤りです。処分清算型では、債権者が目的物を第三者に譲渡した時点で受戻権は消滅します(最判昭57.1.22)。
選択肢2は誤りです。帰属清算型においても、目的物の価値が被担保債権額を上回る場合は清算金の支払いが必要です。
選択肢3は誤りです。集合動産譲渡担保では、構成部分が変動しても担保権は継続します。
選択肢4は正しいです。譲渡担保権者は、目的物の性質や状況に応じて適切な実行方法を選択できます。
次の事例について、債務者Xの受戻権がいつ消滅するかを答えなさい。
事例:XがYから300万円を借り、自己所有の絵画(時価400万円)を譲渡担保として提供。Xが期限までに返済できなかったため、Yは以下の手続きを行った。
Case A(処分清算型):
Case B(帰属清算型):
答え:
行政書士試験対策のポイント:
覚え方のコツ:
「処分は譲渡で、帰属は支払いで」と覚えましょう。処分清算型は第三者への「譲渡」時に受戻権が消滅し、帰属清算型は清算金の「支払い」時に受戻権が消滅します。
※ 譲渡担保は判例法理が中心の分野です。条文だけでなく、重要判例の理解が試験対策では重要になります。関連する担保物権の解説も合わせてご覧いただくと理解が深まります。