🔹テーマ:不当利得とは?(民法703条・704条)
不当利得の定義
ある人が「法律上の理由なく 他人の財産や労務によって利益を受けてしまった」場合、
その人は「受けた利益を返さなければならない」という考え方です。
🧒あなたがコンビニで
「100円のガム」を買ったと思ってレジに出したら、
じつは「1000円の高級チョコ」だった。
💴 でも店員さんが間違えて「100円しか請求しなかった」から、
あなたは知らずに 900円分トクした よね?
このとき、お店側からすると…
「それ、本当は1000円なんだけど…」
「まちがって100円しかもらってないから返してほしい」
というのが 不当利得返還請求 のイメージ!
💡ポイント:
- 「もらう理由がないのにトクした分」は、元に戻してね!というルール。
- 間違いで得しちゃった人は「気づいていなくても(善意でも)」残っている分だけ返してねっていうのが民法のルール。

各選択肢の解説と具体例
✅【1】善意の受益者は、利益の存する限度で返還義務を負う
不当利得による善意の受益者は、その利益の存する限度において、返還する義務を負う。
→ 正しい(○)
📝【具体例】
Aさんが間違ってBさんの口座に10万円を振り込んだ(振込ミス)
→ Bさんはミスと気づかずに5万円だけ使い、残り5万円は口座に残っていた。
→ このときBさんは「善意の受益者」なので、残ってる5万円だけ返せばOK。
📘根拠:民法704条(善意の受益者は「現存利益」限度で返還)
✅【2】修繕義務を借主が負っていた場合、不当利得にはならない
Aが修繕した建物の代金を、Bに対して不当利得で請求できるか?
→ できない(○)
📝【具体例】
- B(大家)がC(借主)に家を貸す。
- 「権利金を免除する代わりにCが修繕は全部やる」と契約済。
- Cが修繕した家をA(工事業者)に頼んだが、Cが支払う前に破産。
→ Aは「修繕工事したのだから、大家Bも利益を得たのでは?」と思って不当利得を請求。
でもBC間で「修繕はCの負担」と合意しているので、Bは正当な対価を払っていないとはいえない。
➡ AはBに不当利得を請求できない。 ⇦業者泣き寝入り!?
📘根拠:最判 平成7年9月19日
❌【3】強迫されたBは、Dに渡ったお金で利益を受けていない
AはBに不当利得として返還を請求できる?
→ できない(×)
📝【具体例】
- CがBを脅して、Aからお金を借りるように指示(Aと金銭消費貸借契約)。
- Bは仕方なく契約して、Aの貸したお金を全く無関係なDに送金。
- 後でBが「強迫されたから無効」と契約を取り消した。
→ この場合、Bはお金をもらっていない=利益を得ていない。
だからAはBに不当利得返還を請求できない。
📘根拠:最判 平成10年5月26日
➡「利益を受けた者」にしか返還義務はない! ⇨詳細説明はこちら
✅【4】盗んだお金で弁済を受けた債権者は、悪意なら不当利得になる
丙は乙に不当利得返還義務を負う?
→ 負う(○)
📝【具体例】
- 甲が乙からお金を盗んだ(または横領)
- 甲はそのお金で、借金を返すために債権者丙に返済した
- 丙が「この金、盗んだ金じゃね?」と知っていた(悪意)
➡ 丙は「法律上の原因なく」他人の金を受け取ったので、乙に対して不当利得として返さなければならない。
📘根拠:最判 昭和49年9月26日
✅まとめ表(4問のポイント比較)
問 | 内容 | 判定 | ポイント・理由 |
---|---|---|---|
1 | 善意の受益者の返還義務 | ○ | 現存利益の限度で返還(民704条) |
2 | 借主が修繕義務を負うケース | ○ | 対価関係あり → Bは不当利得者でない |
3 | 脅されて契約・Dに送金 | × | Bは利益を受けていないので返還義務なし |
4 | 盗んだ金で返済を受けた債権者 | ○ | 悪意あるとき → 不当利得として返還義務 |
📌補足:不当利得の条文チェック
- 民法703条:不当利得の基本条文(法律上の原因なく利益を受けたら返せ)
- 民法704条:善意の受益者は「現存利益」限度でOK
✍️内部リンク:不当利益と事務管理
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🔹『問2』状況のイメージ
たとえば:
🏠 CさんがBさん所有の古いアパートを借りようとしています。
でも、そのアパートはちょっとボロいので、修繕が必要…。
普通なら:
💴【一般的な賃貸】
→ 借主Cが、Bに「権利金(※1)」を払ってから借ります。
(※1)権利金:借りるために最初に払う一時金。返ってこない。
でも今回の契約では:
🔁【今回の特殊契約】
→ C「権利金は払わない代わりに、修繕は自分でやりますね!」
→ B「じゃあOK。それで契約成立にしましょう」
という 「代わりに負担を交換した」契約 なんです。
🔹なにが問題になったの?
そのあとCは、修繕工事をAに依頼して、でも代金を払わないまま無資力に(=お金がなくなる)😥
🔎 Aは「修繕してあげたんだから、家主のBに請求したい!」と思いました。
でも裁判所はこう判断しました👇
❌Bは、修繕の対価として「Cに権利金を免除した」んだから、
Aの修繕によってタダで得したわけじゃないよ。
➤ だから「不当利得」ではないよ。
🔚まとめ
- このケースでは「修繕の代わりに権利金なし」の契約だった。
- Bはただで得していないから「不当利得にはあたらない」。
こういう「契約全体を見て損得がつり合ってるか」が、不当利得かどうかのポイントなんですね 😊
その2:業者は泣き寝入り!?
はい、残念ながらこのケースでは、修繕を請け負った業者(Aさん)は泣き寝入りになる可能性が高いです。理由をもう少し丁寧に説明します👇
🔍 なぜ業者(A)はBに請求できないのか?
修繕したのは事実ですし、本来なら誰かが払うべき代金です。でも…
✅ ポイントはここ!
💡 Bは、Cに「権利金免除」という代価をすでに渡している
つまり、Bからすると:
- 「Cとの契約で、“修繕してくれるなら権利金なし”ってことで話ついてたじゃん」
- 「私はCと“修繕代を払う”って約束してないし、勝手にCがAに頼んだんでしょ?」
という立場になるんです。
🔄 誰が本来払うべきだったのか?
💥 本来払うべきだったのは、依頼者であるCさんです。
でもそのCが無資力(お金がない)になってしまった。
→ だからAは「じゃあ工事で得したBに請求しよう」と考えたけど、
→ 裁判所は「Bは対価(=権利金免除)を払ってるよ」として、請求を認めなかった。
😢 結論:業者は泣き寝入り
- 法律的には、AがCから回収できない以上、それ以上は追えない。
- Bに対しての不当利得返還請求も、契約上Bが得していないと判断されたので認められなかった。
💡補足アドバイス(実務面)
こういうリスクを避けるには:
- 工事の前に「誰が支払うか」「支払保証があるか」明確にする
- 必要なら工事契約書にBを連帯保証人として入れてもらう
- 支払い主と契約者が違う場合は要注意!
業者の立場から見ると理不尽にも感じますが、法律は「誰が本当に利益を得たか」「それは正当な契約に基づくか」で判断するため、こういう結果になるのです。
「③強迫された場合の不当利得」の話を、わかりやすくかみ砕いて解説します。
まず原文をおさらい:
Bは、Cから強迫を受け、同人の言うままに、Aと金銭消費貸借契約を締結し、Aに指示してBとは何らの関係ないDに貸付金を交付させた。
BがAとの契約を取り消したとしても、AはBに「不当利得」として貸付金の返還を請求できない。
💡登場人物と状況を整理!
- A:お金を貸す人(貸主)
- B:強迫された人(借主として見せかけだけ契約)
- C:悪い人(Bを脅して行動させる)
- D:Cの仲間?または利益を受け取った第三者(最終的にお金を受け取る)
💥状況をストーリー風にすると…
🧊1. CがBを脅す
C:「お前、Aから100万円借りろ。で、それをDに渡せ。やらなきゃ痛い目見るぞ。」
🧍♂️2. Bは怖くて言うとおりにする
B:「はい…(やむなく)」
→ Aに「お金を貸してください」とお願いし、契約をする(でも本心では借りたくない)
→ Aはその指示でDにお金を渡す
⚖️3. 後日、BがAとの契約を取り消す
B:「あの契約、Cに脅されてやったものです。強迫されたから無効にします。」
💰4. Aは困る
A:「えっ!?じゃあ、貸したお金返してよ!」
でも実際にお金を受け取ったのはBじゃなくて D!
❌裁判所の判断:「Bに返せとは言えない」
なぜなら…
- Bはお金を受け取ってない(Dに渡してしまった)
- 「利益を受けた人」じゃないと不当利得にはならない
- だから「不当利得返還請求」は成立しない!
🔍超簡単に言うと…
「脅されて中継ぎさせられただけの人に、“返せ”とは言えないよね」
ってことです。
✅この問題のポイントまとめ
項目 | 内容 |
---|---|
💬 どんな話? | 強迫されてお金を借り、全額を他人に渡した |
❓ 誰が得した? | 実際にお金を受け取ったD |
⚖️ 請求できる? | Bは受け取ってないので、AはBに請求できない |
📌 ポイント | 不当利得は「利益を受けた人」にしか請求できない |
Bが借りてDに渡したんじゃなくてAがDに渡したの?じゃあ逆に AはDに利得請求できるの?
その通り、今回のケースでは 「AがDに直接お金を渡している」 ので、AがDに対して不当利得返還請求できる可能性があります。
🔁 状況をもう一度整理
登場人物と流れ:
人物 | 役割 |
---|---|
A | 貸主(お金を出した人) |
B | 強迫された人(名義だけ借主) |
C | 悪者(強迫して計画した人) |
D | お金を受け取った人(関係ない第三者) |
💰 お金の流れ
A → D
(Aが、Bの指示で、Dに直接貸付金を渡した)
❓ AはDに返してと言えるのか?
▶️ 結論:
一定の条件を満たせば、AはDに対して不当利得返還請求が可能です。
📚 法的な根拠(民法703条・704条)
不当利得とは:
法律上の原因なくして他人の財産または労務によって利益を受け、
他人に損失を与えたときは、その利益を返還しなければならない。
💡 今回の場合のポイント
ポイント | 判定 |
---|---|
Dは法律上の原因なく金銭を受け取ったか? | 〇(Aとは何の契約関係もない) |
Dは利益を受けたか? | 〇(お金を受け取った) |
Aは損失を被ったか? | 〇(お金を失った) |
AとDに直接の契約関係があるか? | ×(ない) |
よって、**「法律上の原因なくDがAの金を得ている」**ことになります。
🔁 結論:AはDに不当利得返還請求できる!
つまり、
「Bが脅されて間に入ってただけなら、Aは実際にお金を受け取ったDに“それ返して”って言えばいいでしょ」
という話になります。
🔍 注意点(反論されうる点)
- Dが善意かつすでにお金を使ってしまっていた場合(善意の受益者)には、返還義務は「利益の残ってる分だけ」に限定されます(民法703条)。
- Dが悪意(AやBと関係ないのにお金を受け取る理由がないことを知っていた等)なら、全額返還義務(民法704条)があります。
📝 まとめ表
論点 | 内容 |
---|---|
A→B→Dの流れ? | × 実際は A→D(Bは指示しただけ) |
Bは利益を得た? | × 得ていない |
Dは利益を得た? | 〇 直接得ている |
A→Bへの不当利得請求 | ❌ 不可(利益受けてない) |
A→Dへの不当利得請求 | ✅ 可(条件を満たせば) |
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