🔍 不法原因給付(民法708条):解説&具体例
不法原因給付とは?
👉 簡単に言えば、「道徳的にアウトな目的で渡したお金や財産は、あとから『返せ!』と言えないよ」というルール。
たとえば、
- 不倫関係を維持したいから高価な贈り物をした
- 賭博に負けて支払った
などが典型例です。
【10】愛人関係を維持するために未登記建物を贈与 → 返してもらえる?
❌ 返してもらえません!
- AがBとの愛人関係を維持するために、登記していない建物を贈与し、引き渡した。
- これは「公序良俗に反する目的」であり、民法90条&708条が適用されます。
- 未登記でも引渡しがあれば「給付」が成立(最判昭45.10.21)。
- 結果:AはBに対して返還請求できません。
🟡例:
既婚者のAが愛人Bに「別れないでほしい」と未登記の建物をプレゼント → 後で返せとは言えない。
【11】登記されてないなら登記請求を拒める?
✅ 拒めます!
- AはBに甲建物を贈与したが、まだ登記は移転していない。
- この時点では「給付」は成立していない=Bはまだ登記請求する権利はない。
- Aは移転登記を拒める(最判昭46.10.28)。
🟡例:
「愛人にあげる」と言って家を引き渡したけど、登記してない → 愛人が「登記して」と言ってきても拒否OK。
【12】賭博で負けて骨董品を渡した → 後で「返す約束」したら?
✅ 返してもらえます!
- 民法708条で禁止されるのは「不法原因での給付の返還請求」。
- でも、あとで合意して「やっぱり返すね」と決めた場合は返還請求OK(最判昭28.1.22)。
🟡例:
Aが賭博で負けてBに骨董品を渡した → その後「やっぱ返すよ」とBが約束した → Aは返してもらえる。
【13】未登記建物を不倫相手に引き渡し → 後から登記して返してと言える?
❌ 言えません!
- 建物の引渡しで所有権がすでに移ってしまっており、あとから登記しても無効。
- 不法原因給付に該当するので、AはBに返還請求できない(最判昭45.10.21)。
🟡例:
不倫相手に家を渡してから「やっぱ返して」と言って登記した → もう遅い!登記しても意味なし。
📝 まとめ
問題番号 | 状況概要 | 結論 | ポイント |
---|---|---|---|
10 | 愛人関係維持のため未登記建物を贈与 | ❌返還請求できない | 公序良俗違反+給付成立(引渡済) |
11 | 登記なしの贈与 → 登記請求された | ✅拒否できる | 登記してなければ給付未成立 |
12 | 賭博負けて骨董品渡した→返還の特約 | ✅返還請求できる | その後の合意で新たな契約成立 |
13 | 未登記建物を引渡し→後から登記 | ❌返還請求できない | 引渡しで所有権移転済、登記は無効 |
内部リンク:不法原因給付別解説