ドラえもんで学ぶ民法
種類債権と選択債権をアニメで分かりやすく理解しよう
1. 種類債権とは?
種類債権とは、種類によって特定された物の給付を目的とする債権のことです。「○○という種類の物」として決められている債権です。
ドラえもんがのび太に「22世紀製のクッキー10個」をあげると約束したとします。この時点では、まだ具体的にどのクッキーかは決まっていません。これが種類債権です。
種類債権の特徴
- 種類による特定:「リンゴ5個」「本3冊」のように種類で決める
- 具体的な物はまだ決まっていない:どのリンゴ、どの本かは未定
- 特定が必要:後で具体的な物を決める必要がある
2. 種類債権の特定の効果
種類債権は「特定」という手続きを経て、具体的な物が決まります。特定が起こると、その物についての所有権が移転し、危険も移転します。
民法401条:債務者の債務不履行が加重され、特定物の場合と同様に、善管注意義務を負うことになる
ドラえもんが具体的なクッキーを選んでのび太に「これをあげる」と提供した時点で特定
特定後にそのクッキーが壊れてしまったら、ドラえもんは別のクッキーで代替できない
クッキーの所有権は特定の時点でのび太に移る
具体例:ドラえもんの道具配達
ドラえもんが未来デパートから「タケコプター1個」を注文しました。デパートの倉庫にはたくさんのタケコプターがあります(種類債権)。
配達員が具体的な1個を選んで配達用の箱に入れた時点で「特定」が起こり、その時点からドラえもんの所有物になります。
3. 選択債権とは?
選択債権とは、複数の給付の中から特定の給付を選択して給付することを内容とする債権です。「AかBかCのうちどれか」を選ぶ権利です。
スネ夫の誕生日プレゼント
スネ夫がのび太に「誕生日プレゼントとして、①漫画1冊、②ゲーム1本、③お小遣い1000円のうちどれか1つをあげる」と約束しました。
これが選択債権で、3つの選択肢の中から1つを選んで給付する義務があります。
選択債権の特徴
- 複数の選択肢:2つ以上の給付から選択
- 選択権:誰が選ぶかが重要
- 選択による確定:選択により単一の債権になる
4. 選択権の行使
選択債権では「誰が選択するか」が重要なポイントです。通常は債務者に選択権がありますが、当事者の合意で債権者に選択権を与えることもできます。
民法406条:選択権は、債務者にあるものとする
ジャイアンのお詫び
ジャイアンがのび太のものを壊してしまい、「①新品を買って弁償する、②修理代を払う、③代わりに僕の宝物をあげる」と言いました。
特に約束がなければ、ジャイアン(債務者)が3つのうちどれにするかを選ぶ権利を持ちます。
選択権者の決定
- 原則:債務者が選択権を持つ
- 例外:当事者の合意で債権者に選択権を与えることも可能
- 第三者:当事者の合意があれば第三者に選択権を委ねることも可能
5. 選択者が決まらない場合
選択権を持つ人が選択を行わない場合や、選択する意思がない場合の処理について民法で規定されています。
民法408条:もしも、債権が弁済期にある場合において、相手方から相当の期間を定めて催告をしても、選択権を有する当事者がその期間内に選択をしないときは、その選択権は相手方に移転する
のび太の決断力不足
のび太がドラえもんから「①宿題を手伝う、②一緒に遊ぶ、③おやつを買ってあげる」の中から選んでもらえることになりました。
でものび太は優柔不断で、いつまでも決められません。ドラえもんが「1週間以内に決めて」と催告しても決めなかった場合、選択権はドラえもんに移ります。
民法409条2項:民法では、第三者が選択権を有する場合も想定されている。この場合において、第三者が選択をすることができず、又は選択をする意思を有しないときは、選択権は債務者に移転する
しずかちゃんの仲裁
ジャイアンとスネ夫がケンカして、しずかちゃんに「どちらの言い分が正しいか選んで」と頼みました。
でも、しずかちゃんが忙しくて選択できない場合や、選択したくない場合は、選択権は債務者(この場合の取り決めによる)に移転します。
6. 実際の適用例
種類債権の実例
- 商品売買:「コシヒカリ10kg」の売買契約
- 製造請負:「同型の机3台を製作」する契約
- サービス業:「英語の個人レッスン10回」の契約
選択債権の実例
- 損害賠償:「修理または代替品提供または損害金支払い」
- 契約解除:「履行または契約解除」の選択
- 給付方法:「現金または現物または役務」の選択
7. まとめ
種類債権と選択債権は、日常生活でも頻繁に見られる債権の形態です。それぞれの特徴を理解することで、契約関係をより正確に把握できます。
重要ポイント
- 種類債権:種類で特定された物の給付を目的とし、後で具体的な物が「特定」される
- 特定の効果:所有権移転、危険移転、履行不能の可能性
- 選択債権:複数の選択肢から1つを選んで給付する債権
- 選択権:原則として債務者が持つが、合意により変更可能
- 選択権の移転:選択しない場合は相手方に移転する
これらの概念は、売買契約、サービス契約、損害賠償など、あらゆる法律関係で重要な役割を果たします。ドラえもんたちの日常的な約束事も、実は複雑な法的構造を持っているのです。