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事業譲渡と合併を完全攻略!決議要件・競業禁止・効力発生時期まで徹底解説

行政書士試験|事業譲渡・合併の決議要件と効力発生時期を完全解説

行政書士試験で重要な事業譲渡と合併について、決議要件から効力発生時期、競業禁止まで頻出ポイントを具体例で分かりやすく解説します。

1. 事業譲渡

①事業全部譲渡の決議要件

ポイント:株式会社が事業を全て譲渡する場合、原則として譲渡会社・譲受会社双方の株主総会の特別決議が必要です。

具体例

A製造業株式会社が全事業をB商事株式会社に譲渡する場合、A社とB社の両方で株主総会を開催し、それぞれ議決権の3分の2以上の賛成を得る必要があります。A社にとっては会社の存続に関わる重大事項であり、B社にとっても新規事業の開始という重要な決定だからです。

②重要な一部譲渡の決議要件

ポイント:株式会社が事業の重要な一部(帳簿価格が総資産の5分の1以上のもの)を譲渡する場合も、原則として譲渡会社の株主総会の特別決議が必要です。

具体例

C株式会社(総資産10億円)が製造部門(帳簿価格3億円)をD株式会社に譲渡する場合、3億円は総資産の30%(5分の1以上)にあたるため、C社は株主総会の特別決議が必要です。会社の事業構造に大きな変化をもたらすためです。

③譲受会社の決議要件

ポイント:しかし、事業の重要な一部の譲渡の場合は、譲受会社の株主総会の特別決議は不要です。

具体例

上記の例で、D株式会社(総資産50億円)がC社の製造部門(3億円)を譲り受ける場合、D社にとっては総資産の6%程度の取得なので、株主総会の特別決議は不要です。取締役会の決議や代表取締役の判断で実行できます。譲受会社への影響が相対的に小さいためです。

④競業禁止義務

ポイント:事業の譲渡会社は、原則として、譲渡日から20年間、同一の市町村(東京都と政令指定都市では区)及び隣接する市町村の区域内で同一事業を行うことができません。

具体例

E株式会社(横浜市所在)がレストラン事業をF株式会社に譲渡した場合、E社は20年間、横浜市内および隣接する川崎市・東京都内でレストラン事業を行えません。しかし、静岡県や群馬県など隣接しない地域でなら同一事業が可能です。譲受会社の事業価値を保護する制度です。

⑤商号続用責任

ポイント:事業を譲り受けた会社が、譲渡会社の商号を引き続き使用する場合、原則として、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負います。

具体例

G食品株式会社がH商事株式会社に事業譲渡し、H社が「G食品株式会社」の商号をそのまま使用した場合、G社時代の買掛金500万円についても、H社が弁済責任を負います。取引先は商号の継続により同一会社と信頼して取引するため、債権者保護の観点から責任を負わせる制度です。

⑥株式買取請求権

ポイント:株主総会で事業の全部または重要な一部を譲渡する特別決議がなされた場合、反対株主は、会社に対して所有する株式を公正な価格で買い取るよう請求できます。

具体例

I株式会社の事業全部譲渡に反対する株主J氏は、「会社の方針に賛成できないので、株式を適正価格で買い取ってください」と請求できます。J氏は事前に反対の意思を通知し、株主総会で反対票を投じる必要があります。会社の根本的変更に反対する株主の退出権を保障する制度です。

2. 合併

⑦合併の種類

ポイント:株式会社と持分会社とが合併することもでき、いずれの会社も、存続会社・新設会社になれます。

具体例

異種合併例:K株式会社とL合同会社が合併する場合、K社を存続会社とする吸収合併も、L社を存続会社とする吸収合併も可能です。また、両社が消滅して新たにM株式会社を設立する新設合併も選択できます。会社形態の違いは合併の障害になりません。

⑧権利義務の承継

ポイント:合併によって消滅する会社の権利義務は、法律上当然に、全て一括して存続会社または新設会社に移転します。

具体例

N株式会社がO株式会社を吸収合併した場合、O社の全ての資産(土地、機械、売掛金など)と負債(借入金、買掛金など)、さらに契約関係(雇用契約、取引契約など)が自動的にN社に移転します。個別の移転手続きは不要で、包括承継と呼ばれます。

⑨吸収合併の効力発生

ポイント:吸収合併の効力が発生するのは、合併契約で定めた効力発生日です。

具体例

P株式会社とQ株式会社が吸収合併契約で「効力発生日:令和6年10月1日」と定めた場合、10月1日にQ社は消滅し、P社に権利義務が移転します。登記手続きは効力発生後2週間以内に行えば足り、登記前でも合併の効力は発生しています。

⑩新設合併の効力発生

ポイント:新設合併の効力が発生するのは、新設会社の設立登記の日です。

具体例

R株式会社とS株式会社が新設合併によりT株式会社を設立する場合、T社の設立登記が完了した日(例:10月15日)に、R社とS社が消滅し、T社が権利義務を承継します。新設会社は登記により法人格を取得するため、登記日が効力発生日となります。

まとめ

事業譲渡と合併は、企業の組織再編における重要な手法です。事業譲渡では譲渡規模により決議要件が異なり、競業禁止義務や商号続用責任など特有の制約があります。反対株主には株式買取請求権が保障されています。合併では会社形態の違いを超えた組織再編が可能で、包括承継により権利義務が一括移転します。効力発生時期は吸収合併と新設合併で異なるため注意が必要です。行政書士試験では、決議要件の区別、競業禁止の地域的範囲、効力発生時期の違いを正確に理解することが重要です。これらの制度は企業の成長戦略と利害関係者保護のバランスを図る重要な仕組みとして機能しています。

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