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株主総会の権限と議決権を徹底攻略!買取請求権まで完全解説

目次

  1. 株主総会の権限
  2. 株主の議決権
  3. 株主の株式買取請求権

1. 株主総会の権限

①取締役会非設置会社での無制限権限

ポイント:取締役会が設置されていなければ、株主総会は一切の事項について決議でき、議題として予定されていなかった事項についても決議できます。

具体例

A株式会社(取締役会非設置)の株主総会で、当初は「役員報酬の件」のみが議題でしたが、株主B氏が「新規事業への参入はどうですか?」と提案。この場合、事前に議題になくても株主総会でその場で決議することができます。株主が会社のあらゆる事項を直接決定できる仕組みです。

②取締役会設置会社での限定権限

ポイント:取締役会が設置されると、株主総会の権限は法律または定款で株主総会の権限とされている事項の決議に限定され、他の事項は取締役会に委ねられます。

具体例

C株式会社(取締役会設置)の株主総会では、定款変更や役員選任など法定事項のみ決議可能です。「新商品の開発方針」や「営業戦略の変更」などの業務執行事項は、株主総会では決議できず、取締役会の専権事項となります。経営の専門性と効率性を重視した制度です。

③譲渡制限株式決議の特別要件

ポイント:発行する株式を全て譲渡制限株式にする株主総会決議には、議決権を行使できる株主の半数以上であって、その株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。

具体例

D株式会社(株主10名、議決権1000個)で全株式を譲渡制限株式にする場合、5名以上の株主が出席し、かつ議決権の667個以上(3分の2)の賛成が必要です。通常の特別決議より厳格で、株主の頭数(人数)要件も加わります。株式の自由譲渡性を制限する重大な変更だからです。

④全員出席総会の有効性

ポイント:招集手続を欠いても、株主全員が開催に同意して出席した全員出席総会で、株主総会の権限に属する事項について行った決議は有効に成立します。

具体例

E株式会社で急な役員変更が必要になり、招集通知の2週間前発送ができなかった場合でも、株主全員(F氏、G氏、H氏)が「今日開催することに同意します」と言って総会に出席すれば、正式な決議として有効です。手続きの瑕疵が実質的に治癒される制度です。

2. 株主の議決権

⑤議決権の原則

ポイント:株主は、原則として1株につき1個の議決権を有します。

具体例

I株式会社で、株主J氏が300株、株主K氏が700株を保有している場合、J氏は300個、K氏は700個の議決権を持ちます。株主総会の決議では、出資額に応じた発言力を持つ仕組みです。ただし、種類株式として議決権制限株式を発行することも可能です。

⑥代理人による議決権行使

ポイント:議決権は代理人によって行使でき、代理人への授権は株主総会ごとに行う必要があります。また、定款で代理人を株主に限定することも認められています。

具体例

L株式会社の株主M氏が海外出張で株主総会に出席できない場合、妻のN氏に「6月15日の株主総会での議決権行使を委任します」という委任状を作成して代理行使してもらえます。ただし、次回の株主総会では新たに委任状が必要です。定款で「代理人は株主に限る」と定めれば、株主でないN氏は代理人になれません。

3. 株主の株式買取請求権

⑦買取請求権が認められる場合と認められない場合

ポイント:株式譲渡制限の定めを設ける定款変更決議なら、反対株主に株式買取請求権が認められます。しかし、議決権制限株式を発行する旨の定款変更決議では認められません。

具体例

買取請求権あり:O株式会社が「全株式を譲渡制限株式にする」定款変更をする場合、反対株主P氏は「私の株式を会社で買い取ってください」と請求できます。株式の流動性が大幅に制限されるためです。
買取請求権なし:同社が「一部の株式について議決権を制限する」定款変更の場合は、反対しても買取請求権は認められません。既存株主の議決権には影響がないためです。

⑧反対の意思表示手続き

ポイント:株式買取請求権を行使するためには、株主は決議の前に会社に反対の意思を通知し、そのうえで株主総会で反対しなければなりません。

具体例

Q株式会社の譲渡制限定款変更に反対する株主R氏は、①事前に会社に「この議案に反対です」と書面で通知、②株主総会当日に「反対します」と表明(または欠席)する、という2段階の手続きが必要です。総会でいきなり反対するだけでは買取請求権は取得できません。事前の意思表示が必須です。

⑨買取請求権の撤回

ポイント:株式買取請求権を行使しても、会社の承諾があれば撤回できます。

具体例

S株式会社に株式買取請求をした株主T氏が、後日「やはり株主として残りたい」と考えを変えた場合、S社が「撤回を認めます」と承諾すれば、T氏は買取請求を取り下げて株主として残ることができます。一度請求しても、会社側の承諾があれば柔軟に対応できる制度です。

まとめ

株主総会は株式会社の最高意思決定機関ですが、取締役会の設置により権限が大きく変わります。議決権は株主平等の原則に基づき、代理行使も認められています。株式買取請求権は少数株主保護の重要な制度で、事前の反対意思表示という厳格な手続きが特徴です。行政書士試験では、取締役会設置の有無による権限の違い、特別決議の要件、買取請求権の行使要件と適用場面を正確に区別することが重要です。これらの制度は株主の権利保護と会社経営の効率性のバランスを図る重要な仕組みとして機能しています。

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