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株式会社の機関設計、会計参与・監査役・指名委員会等設置会社を解説 P220

目次

  1. 機関設計の基本
  2. 会計参与
  3. 監査役
  4. 指名委員会等設置会社

1. 機関設計の基本

①利用可能な機関

ポイント:会社法は、株主総会・取締役・取締役会・会計参与・監査役・監査役会・会計監査人・監査等委員会・指名委員会などの機関を用意しています。

具体例

A株式会社は会社の規模や特性に応じて、これらの機関から適切なものを選択できます。小規模な同族会社なら「株主総会+取締役」のシンプルな構成、大企業なら「株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人」の充実した構成といった具合に、会社のニーズに合わせて設計できます。

②必須機関

ポイント:全ての株式会社に必須の機関は、株主総会と取締役だけです。

具体例

資本金100万円のB株式会社(従業員3名)でも、時価総額1兆円のC株式会社でも、最低限「株主総会」と「取締役1名」があれば設立・運営が可能です。その他の機関(取締役会、監査役など)は会社の判断で設置する任意機関ですが、一定条件下では設置義務が生じます。

2. 会計参与

③会計参与の役割

ポイント:会計参与とは、取締役と共同して計算書類等を作成する機関で、計算書類等の承認をする取締役会に出席しなければなりません。

具体例

D株式会社の会計参与であるE公認会計士は、取締役と一緒に貸借対照表や損益計算書を作成します。取締役会で「今期の決算書を承認しましょう」という議題が出る際、E公認会計士は必ず出席し、専門家の立場から意見を述べる義務があります。取締役だけでは作成できません。

④会計参与の資格要件

ポイント:会計参与は、公認会計士・監査法人または税理士・税理士法人でなければなりません。

具体例

F株式会社が会計参与を設置する場合、G公認会計士、H監査法人、I税理士、J税理士法人のいずれかを選任する必要があります。経理部長のK氏(簿記1級保持者)がいくら会計に詳しくても、上記の資格がなければ会計参与にはなれません。

3. 監査役

⑤監査役の設置義務

ポイント:取締役会または会計監査人を置く会社は、原則として監査役を設置しなければなりません。

具体例

設置義務あり:L株式会社が取締役会を設置した場合、自動的に監査役の設置義務が生じます。
設置義務なし:M株式会社が取締役3名のみで取締役会を設置せず、会計監査人も置かない場合、監査役の設置は任意です。

⑥監査役の選任・解任

ポイント:監査役は株主総会の普通決議で選任されますが、解任には特別決議が必要です。

具体例

選任:N株式会社の株主総会で「監査役候補のO氏に賛成する株主は挙手を」→過半数の賛成でO氏が監査役に就任。
解任:O氏の解任には、議決権の3分の2以上の賛成が必要です。監査役の独立性を保護するため、解任のハードルを高くしています。

⑦監査役の監査権限

ポイント:監査役は、会計監査に加え、業務全般の監査を行います。

具体例

P株式会社の監査役Q氏は、決算書の数字をチェックする会計監査だけでなく、「この新規事業は会社にとって有益か」「取締役は法令を守って経営しているか」といった業務監査も行います。取締役の職務執行全般が監査対象です。

⑧監査範囲の限定

ポイント:非公開会社で監査役会も会計監査人も置いていない会社は、定款で監査役の監査範囲を会計監査に限定できます。

具体例

R株式会社(非公開会社、監査役1名のみ)が定款で「監査役の監査範囲は会計監査に限る」と定めた場合、監査役S氏は決算書のチェックのみを行い、取締役の業務執行について監査する必要がありません。小規模会社の負担軽減策です。

4. 指名委員会等設置会社

⑨執行役による業務執行

ポイント:指名委員会等設置会社の業務執行は、取締役会決議で選任された執行役が担当し、代表権は代表執行役が行使します。

具体例

T株式会社(指名委員会等設置会社)では、取締役は監督に専念し、実際の業務執行はU執行役、V執行役、W代表執行役が担当します。契約締結や重要な業務判断はW代表執行役が行い、取締役は執行役の職務を監督します。監督と執行の分離が明確です。

⑩委員会の構成

ポイント:指名委員会・監査委員会・報酬委員会の各委員会は、3人以上の委員(取締役)で組織し、各委員の過半数は社外取締役でなければなりません。

具体例

X株式会社の指名委員会が5名で構成される場合、最低3名は社外取締役である必要があります。例えば、社外取締役Y氏、Z氏、AA氏と、社内取締役BB氏、CC氏という構成が可能です。これにより外部の客観的な視点が経営に反映されます。

⑪報酬委員会の権限

ポイント:報酬委員会は、執行役や取締役等の個人別の報酬等の決定方針を定め、個人別の報酬等の内容を決定します。

具体例

DD株式会社の報酬委員会は、「代表執行役EE氏の年収は2000万円(基本給1500万円+業績連動500万円)」「執行役FF氏の年収は1200万円」といった個人別の具体的な報酬額を決定します。株主総会ではなく、報酬委員会が決定権を持ちます。

まとめ

株式会社の機関設計は、会社の規模や特性に応じて柔軟に選択できる制度です。会計参与は中小企業の会計の信頼性向上、監査役は取締役の職務執行の監督、指名委員会等設置会社は大企業のガバナンス強化を目的としています。各機関の設置要件と権限を正確に理解し、会社の実情に応じた最適な機関設計を選択することが重要です。行政書士試験では、各機関の役割分担と設置要件を混同しないよう注意が必要です。

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