問 仮装の売買契約に基づく売買代金債権が他に譲渡された場合、債権の譲受人は第三者にあたらないため、譲受人は、譲受債権の発生原因が虚偽表示によるものであることについて善意であっても、買主に対して売買代金の支払を求めることができない。
虚偽表示に基づく売買代金債権の譲渡と民法94条2項
民法94条2項は「善意の第三者」に対して通謀虚偽表示による無効を主張できないと規定しています。この原則は、債権にも適用されるのでしょうか?
設問のポイント
以下のようなケースを考えます。
A →(仮装売買)→ B ↑ (売買代金債権が発生) B →(債権譲渡)→ C(債権の譲受人)
- A:売主(債権者)
- B:買主(債務者)
- C:Bから債権(売買代金債権)を譲り受けた第三者
このとき、AとBの売買が通謀虚偽表示(仮装の売買)であったとしても、債権を譲り受けたCが善意であれば、CはBに対して売買代金の支払いを請求できます。
理由:債権譲受人も「第三者」にあたる
この問題の核心は、債権の譲受人(C)が民法94条2項の「第三者」にあたるかです。
大審院昭和13年12月17日の判例は、仮装の売買契約から発生した売買代金債権であっても、譲受人は「第三者」にあたるとしました。
つまり、Cが善意であれば、たとえAとBの間に実体のない仮装売買があったとしても、そのことを理由に「債権は無効」とBは主張できないのです。
結論
設問は誤りです。債権の譲受人は「第三者」にあたり、善意であれば債権を行使できます。
図解まとめ(図式)
A(売主) │ 仮装の売買契約 ▼ B(買主)─┐ │ 売買代金債権(実体なし) │ │ 譲渡 └────────→ C(債権譲受人)※善意 ⇒ Cは「第三者」として債権を行使できる(民法94条2項)