🧠この記事では、行政書士試験でもよく出題される「保佐制度に関する同意と取消しのルール」について、合格革命・肢別問題集P534の問題をベースにやさしく解説します。
✅そもそも「保佐」ってなに?
「保佐(ほさ)」とは、判断能力が不十分な人(例えば軽度の認知症など)を保護するための制度で、法律行為の一部については保佐人の同意が必要となる仕組みです。
📝肢別問題から学ぶ!保佐に関する〇×解説
❌肢112:保佐開始の審判に本人の同意が必要?
本人以外の者の請求によって保佐開始の審判をするには、本人の同意が必要である。
➡ 【誤り】
民法11条により、保佐開始の審判は、本人以外の者の請求によっても本人の同意なしに開始できます。
🧩補助制度と混同しやすいですが、補助開始には本人の同意が必要(民法15条2項)なので注意!
❌肢3:元本の受け取りは同意なしでOK?
被保佐人が行った元本の領収は、保佐人の同意がなくても取り消せない。
➡ 【誤り】
「元本の領収」は日常生活の範囲を超え、財産に大きな影響を与える行為。
そのため保佐人の同意が必要(民法13条1項1号)。
➡ 同意がなければ取消し可能です!
⭕肢4:土地の購入申込みは?
被保佐人が、保佐人の同意を得ずに、住宅を建てるための土地購入の申込みをした。
➡ 【正しい】
土地購入は「不動産に関する権利の取得」に該当(民法13条1項3号)。
➡ 保佐人の同意が必要、同意がなければ取り消し可能。
⭕肢5:土地を贈与される行為は?
保佐人の同意なしに、土地の贈与を受ける行為は取り消せない。
➡ 【正しい】
贈与を受けるだけなら、被保佐人に一方的利益がある行為。
➡ 同意なしでもOK、取消し不可。
🧩注意:「負担付き贈与」の場合は異なり、同意が必要(民法13条1項7号)。
❌肢6:同意が必要な行為は法定のものだけ?
家庭裁判所は、法に定められた行為以外に同意が必要な行為を指定することはできない。
➡ 【誤り】
民法13条2項により、家庭裁判所は法定以外の行為についても「同意を要する」と定めることができます。
➡ 裁判所の判断で個別指定も可能!
⭕肢7:代理権付与の審判は本人の同意が必要?
本人以外の者が請求する場合、保佐人への代理権付与には本人の同意が必要。
➡ 【正しい】
民法876条の4第2項により、本人以外の請求で代理権を付けるには、本人の同意が必要。
🧠補足:保佐人に代理権が与えられると、本人に代わって行為ができるようになるため、慎重な扱いになります。
🎯まとめ表:保佐人の同意と取消しの可否
行為内容 | 同意の要否 | 同意なしの場合の効果 |
---|---|---|
保佐開始の審判(本人以外の請求) | 不要 | 審判可能 |
元本の領収 | 必要 | 取消し可能 |
土地の購入申込み | 必要 | 取消し可能 |
土地の贈与を受ける行為 | 不要 | 取消し不可 |
法定外の同意行為指定 | 家裁の審判で可能 | 可 |
保佐人への代理権付与(本人以外の請求) | 本人の同意が必要 | 同意なければ不可 |
✅ 被保佐人の行為ごとの同意必要性と理由一覧(民法13条)
行為内容 | 保佐人の同意が必要? | 同意なしで取消可能? | 理由・解説 |
---|---|---|---|
元本の受領(例:借金返済を受け取る) | 必要(13条1項1号) | 取消し得る | 元本は大金になりがちで、本人がすぐ使ってしまうなどの危険があるため。日常生活を逸脱。 |
土地購入の申込み | 必要(13条1項3号) | 取消し得る | 不動産の取得は高額で生活に重大な影響を及ぼすため、保佐人の同意が必要。 |
土地の贈与を受ける(負担なし) | 不要 | 取消し得ない | 無償でもらえるだけで本人に不利益がなく、むしろ有利なため。 |
負担付贈与の承諾(例:贈与されるが条件あり) | 必要(13条1項7号) | 取消し得る | 「代わりに○○してください」など負担を伴うため、保佐人の同意が必要。 |
居住用住宅のための土地購入申込み | 必要(13条1項3号) | 取消し得る | 自宅用であっても高額の不動産取得であり、やはり生活への影響が大きいから。 |
本人以外の者の申立てによる保佐開始審判 | 不要(11条) | ― | 本人の意思にかかわらず、状態に応じて必要とされる制度のため。保護優先。 |
特定行為への代理権付与(代理権付与審判) | 必要(876条の4第2項) | ― | 代理権の付与は本人の重要な法的支配に関わるので、本人の同意が必要。 |
家庭裁判所による同意権拡張の審判(13条2項) | 不要 | ― | 状況に応じて柔軟に対応するため、本人の同意なしでも家庭裁判所の判断で拡張可能。 |
🔍 ポイント
- 金額が大きい・生活に重大な影響がある行為 → 保佐人の同意が「必要」。
- 一方的に利益がある(贈与など)行為 → 同意は「不要」。
- 保佐制度の開始や代理権付与など制度的判断 → 同意の要否は行為の性質で変わる。
- 「お金が動く」「不動産が絡む」→ 要同意(保佐人)
- 「もらえるだけ」「裁判所判断」→ 同意不要な場合もある
💡まとめ
✅ 保佐制度では同意が必要な行為が多数!
✅ 家裁の審判でさらに同意を要する行為を追加できる
✅ 保佐人への代理権付与は慎重に、本人同意が原則!
行政書士試験では「取り消せる/取り消せない」の見極めがカギです🔑
🎓関連条文
- 民法11条:保佐開始の審判
- 民法13条:同意を要する行為と取消し
- 民法876条の4:代理権の付与