「占有者が取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していたことを要する」
→ これは要しません。
【詳しい解説】
■ 時効取得と登記対抗の原則
民法では、不動産の取得時効(民法162条)によって所有権を取得しても、
第三者に対抗するには登記が必要です(民法177条)。
ただし例外があります。
■ 背信的悪意者には登記なしで対抗できる(判例)
占有者が取得時効で所有権を得ていて、
それを知らずに登記した「第三者」には通常は勝てませんが、
その第三者が 「背信的悪意者」、つまり
「知ってて不正に登記を利用しようとした人」の場合は
登記なしでも時効取得を対抗できるとするのが判例(最判昭和42年5月2日 など)です。
■ では「背信的悪意者」とは?
判例では以下のような認識がある人を指します:
- 時効取得しようとしていた者がいたことを知っていた
- しかも、それを排除する目的で登記を先に取った
ただし、時効完成済みであることの認識までは不要です。
→ つまり
「この人、もうすぐ時効で取れるのにそれを妨害しよう」
といった不正な意図があれば、「背信的悪意者」とされうる
【テーマ】
「登記のない時効取得者が第三者に勝てるか?」
→ **例外的に勝てることがある!その条件は?**という話。
【簡単に言うと】
不動産を長年占有していて時効で取得した人が、
まだ登記をしていない間に、他の人がその不動産を買って登記した場合――
普通なら「登記がある第三者」が勝つけど…
【でも例外あり!】
その第三者が:
- ずっとその不動産を占有していた人がいると知っていて、
- にもかかわらず、その人を無視して登記を取った場合、
- さらに、その登記を使ってその人を追い出そうとしたりすると、
→ これは「背信的悪意者」として、
登記がない時効取得者にも負けることがある!
【じゃあ、「要件を全部知ってた」必要ある?】
→ 必要ない!
- 「この人、ずっと住んでたな」くらいの認識があればOK
- 時効が本当に成立してるかどうかまで正確に知ってる必要はない
【まとめ】
ポイント | 内容 |
---|---|
原則 | 登記がないと第三者に勝てない |
例外 | 背信的悪意者には登記なしで対抗できる |
背信的悪意者とは | 占有者の存在を知ってて、排除目的で登記を使うような人 |
要件の認識 | 時効の要件を全部知らなくても「ずっと住んでた」と知っていればOK |
知らんぷりすれば
わからなくない?
ざっくり言えば:
「知らなかったフリして登記を取った人は保護されないよ!」
「知らんぷりすれば逃げられるんじゃ?」と思うのは自然な感覚ですが、民法上は “知らなかったフリ” は通用しないこともある んです。
■ ポイント:形式だけでなく“状況全体”を見て判断する
裁判所は、**客観的な状況から「本当は知ってたでしょ」**と判断することがあります。これを「推認(すいにん)」といいます。
たとえば…
- その土地のすぐ隣に住んでいて、10年間ずっと人が使っているのを見ていた
- 売買のときに、売主が「ちょっとややこしい物件だけど」みたいに言っていた
- 現地に行ったら、他人が庭を管理していた・建物に生活感があった など
こうした事情があれば、「知らなかった」と主張しても、 → “知らないはずがない” と見なされ、背信的悪意者とされる可能性があります。
■ まとめ:知らんぷりは危ない
「知らなかった」と言っても、状況次第では「本当は知ってた or 気づけたでしょ」とされる。
→ 登記があっても勝てないことがある。