行政法入門講座:初学者向けプレゼンテーション
こんにちは、皆さん!
今日は「行政法」について学んでいきましょう。行政書士試験では最重要科目の一つで、合否を左右する分野です。難解な部分もありますが、今回は全体像をつかむことを目標に、なるべくやさしく解説していきます。
【1】行政法とは?
行政法とは、「行政機関の組織・作用・手続・救済」などに関する法体系の総称です。単一の法律ではなく、複数の法律(例:行政手続法、行政事件訴訟法、国家賠償法など)で構成されています。
行政法の対象となる「行政」とは?
行政とは、立法・司法と並ぶ国家の三大機能の一つであり、「法律を具体的に実施する行為全般」を指します。
例:住民票の交付、飲食店営業許可、道路整備、税金の徴収など
民法との違い
民法は私人間の対等な関係を規律しますが、行政法は公権力を持つ行政機関と国民との非対等な関係を規律します。そのため、行政法には国民の権利保護の観点が非常に重視されます。
【2】行政法の基本原則
法律による行政の原理
行政は必ず法律に基づいて行わなければなりません(法治主義の一環)。これにより行政権の恣意的な行使を防ぎます。
行政裁量とその限界
行政機関には、法律の範囲内で一定の「裁量(判断の余地)」がありますが、
・裁量の逸脱や濫用があれば違法とされます。
・裁量の有無や程度は個別の法律により異なります。
【3】行政法の構成(4つの柱)
行政法は大きく次の4分野に分類されます:
- 行政組織法
- 行政作用法(狭義の行政法)
- 行政救済法
- 行政手続法(最近は独立分野とみなされることも)
① 行政組織法
行政機関の組織構造や権限分配を定める法です。
例:国家行政組織法、地方自治法など
中央省庁の数や内部構造、地方公共団体の種類や役割などが規定されています。
② 行政作用法(狭義の行政法)
行政の行為内容に関するルールです。次のような作用が含まれます。
a. 行政行為(行政処分)
法的効果を持つ一方的行為。例:
- 許可(飲食店営業許可)
- 命令(違法建築物除去命令)
- 認可・確認(建築確認・国籍確認)
※行政行為には公定力・執行力・不可争力といった効力が認められます。
b. 行政立法
行政機関が作る一般的なルール。
- 法規命令(政令・省令など)=法的拘束力あり
- 行政規則(通達・要綱など)=原則内部向け
※通達が外部にも影響を与える実務が多く見られ、裁判例でも問題になります。
c. 行政契約
行政機関と私人の契約。例:道路建設の委託契約など。
民法の契約と違い、公法的色彩を持つことが特徴です。
d. 行政指導
法的拘束力のない助言・要請・勧告など。
ただし実際には、企業などが従わざるを得ない場面もあり、問題になることがあります。
③ 行政救済法
行政による違法または不当な処分・不作為に対して、国民を保護する制度。
a. 行政不服申立て(行政機関内部での争い)
- 異議申立て
- 審査請求(行政不服審査法)
例:税務署の処分に不服→国税不服審判所に審査請求
b. 行政事件訴訟(裁判所での争い)
- 抗告訴訟(取消訴訟・無効確認訴訟など)
- 当事者訴訟(例:公務員の地位確認訴訟)
- 民衆訴訟(例:選挙無効確認訴訟)
- 機関訴訟(国と自治体の権限争い)
※取消訴訟では、「原告適格(法律上の利益を有する者)」が重要要件です。
c. 国家賠償請求
国家賠償法に基づき、次の2類型があります:
- 1条責任:公務員の職務上の違法行為による損害(例:警察官の誤認逮捕)
- 2条責任:公の営造物の設置・管理の瑕疵(例:道路の穴で転倒)
④ 行政手続法(平成5年施行)
行政行為の**手続的正義(透明性・公正性)**を確保する法律。
- 申請型処分:審査基準の設定・公表義務あり
- 不利益処分:弁明・聴聞の機会付与が原則
- 行政指導:任意性の確保
- 届出:受理の原則、内容審査は不可(法令で別途定められる場合を除く)
※処分の事前通知・理由の提示も義務として定められています。
【4】情報公開法・個人情報保護法
情報公開法
行政機関の持つ情報を国民が閲覧・請求できる制度。
→「知る権利」の具体化
個人情報保護法(行政機関向け)
国や地方公共団体が保有する個人情報を適切に取り扱うための法律。
※本人開示請求などの手続も定められています。
【まとめ】
- 行政法は「行政のしくみと国民との関係」を規律する法律群。
- 「組織・作用・救済・手続」の観点から体系的に学ぶ。
- 行政書士試験では、特に「行政行為」「手続法」「取消訴訟」「国家賠償」が頻出!
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