毎月の給与から差し引かれる保険料。その行き先である公的保険制度は、実は私たちの生活を様々な場面で支えています。この記事では、複雑で分かりにくい公的保険の保障内容を、具体例を交えてわかりやすく解説します。
目次
公的保険制度の全体像 {#全体像}
日本の社会保障制度の特徴
日本の公的保険制度は「国民皆保険・皆年金」を基本理念とし、誰もが必要な保障を受けられる仕組みになっています。
5つの主要な公的保険制度
- 健康保険(医療保険)
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 介護保険
- 労災保険
これらは「社会保険」と総称され、私たちの生活を病気・老後・失業・介護・労災といった様々なリスクから守っています。
健康保険の保障内容 {#健康保険}
医療費の保障
健康保険の最も基本的な保障は医療費の補助です。
- 一般的な医療費の自己負担割合:
- 未就学児:2割
- 70歳未満:3割
- 70歳以上75歳未満:2割(現役並み所得者は3割)
- 75歳以上:1割(現役並み所得者は3割)
高額療養費制度
1ヶ月の医療費が高額になった場合、自己負担限度額を超えた分が払い戻される制度です。
例: 40歳のAさん(年収400万円)が入院し、医療費が100万円かかった場合、窓口での支払いは30万円(3割負担)ですが、高額療養費制度により実際の負担は約8万円程度に抑えられます。
傷病手当金
業務外の病気やケガで働けなくなった場合、給料の約2/3が最長1年6ヶ月支給されます。
例: 月給30万円のBさんが肺炎で2ヶ月休職した場合、月に約20万円の傷病手当金が支給されます。
出産育児一時金と出産手当金
- 出産育児一時金:子ども1人につき42万円支給
- 出産手当金:産前産後休業中、給料の約2/3が支給
医療費控除との併用
確定申告時に医療費控除を利用することで、さらに負担を軽減できます。
厚生年金保険の保障内容 {#厚生年金}
老齢年金
- 原則65歳から受給開始
- 受給額は加入期間と平均報酬額により決定
- 夫婦2人の標準的な老齢年金受給額:月約22万円(2023年度)
障害年金
病気やケガで障害が残った場合に支給される年金です。
- 障害等級によって支給額が異なる
- 1級:平均的な額で月約8.3万円程度
- 2級:平均的な額で月約6.6万円程度
- 3級:平均的な額で月約5.3万円程度
遺族年金
加入者が亡くなった場合、残された家族に支給される年金です。
例: 40歳で亡くなった夫(年収500万円)の場合、妻と子ども2人の遺族には月約10万円程度の遺族年金が支給されます。
雇用保険の保障内容 {#雇用保険}
基本手当(失業給付)
失業した際に、以前の給料の50〜80%が、年齢や雇用期間に応じて90〜330日間支給されます。
例: 月給25万円で働いていた45歳のCさんが会社都合で退職した場合、日額約6,700円が最大270日分支給されます。
育児休業給付金
育児休業中に、休業前賃金の67%(最初の6ヶ月)、その後は50%が支給されます。
介護休業給付金
家族の介護のために休業する場合、休業前賃金の67%が支給されます。
教育訓練給付金
厚生労働大臣が指定する講座を受講した場合、費用の一部(20〜70%)が支給されます。
介護保険の保障内容 {#介護保険}
対象者
40歳以上の方が加入し、原則65歳以上で利用可能(特定疾病の場合は40〜64歳でも利用可能)
介護サービスの種類
- 在宅サービス:訪問介護、デイサービス、訪問看護など
- 施設サービス:特別養護老人ホーム、介護老人保健施設など
- 地域密着型サービス:小規模多機能型居宅介護など
自己負担割合
- 原則:1割
- 一定以上所得者:2割または3割
例: 要介護3の高齢者が特別養護老人ホームを利用する場合、月約24万円の費用のうち、自己負担は約2.4万円(1割負担の場合)です。
労災保険の保障内容 {#労災保険}
業務災害と通勤災害
仕事中や通勤途中のケガや病気が対象です。
療養補償給付
業務上の病気やケガの治療費が全額カバーされます(自己負担なし)。
休業補償給付
休業4日目から、給料の80%相当額が支給されます(特別支給金を含む)。
障害補償年金・一時金
後遺障害が残った場合、障害等級に応じた年金または一時金が支給されます。
遺族補償年金・一時金
業務上の災害で死亡した場合、遺族に年金または一時金が支給されます。
知っておくべき給付申請の手続き {#手続き}
申請主義の原則
公的保険の給付は、基本的に自分から申請する必要があります。知らないと受け取れないことも多いので注意しましょう。
申請に必要な書類
- 本人確認書類
- 保険証
- 診断書(傷病手当金、障害年金など)
- 印鑑
- 通帳またはキャッシュカード
申請窓口
- 健康保険:勤務先または協会けんぽ、健康保険組合
- 年金:年金事務所
- 雇用保険:ハローワーク
- 介護保険:市区町村の窓口
- 労災保険:労働基準監督署
申請期限
給付によって申請期限が異なります。例えば、高額療養費は診療月から2年以内に申請する必要があります。
まとめ:公的保険を賢く活用するために {#まとめ}
知っておくべきポイント
- 公的保険は申請しないと受け取れないものが多い
- 保障内容は定期的に見直されるので最新情報を確認する
- 複数の給付を組み合わせて受けられることもある
- 民間保険との重複を確認し、保険料の無駄をなくす
情報収集の方法
- 各制度の公式ウェブサイト
- 窓口での相談
- パンフレットやガイドブック
公的保険制度は私たちの生活に大きな安心をもたらしてくれます。その保障内容を正しく理解し、必要なときに適切に活用することで、人生の様々なリスクに備えることができます。
※本記事は2024年2月時点の情報に基づいています。制度の詳細は変更される可能性があるため、最新情報は各窓口や公式サイトでご確認ください。
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